日本集中治療医学会雑誌
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症例報告
高気圧酸素治療が有効であった腸腰筋膿瘍の一例
田中 亮鶴田 良介金子 唯金田 浩太郎小田 泰崇井上 健笠岡 俊志前川 剛志
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2007 年 14 巻 2 号 p. 211-216

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抄録

患者は61歳, 女性である。臀部痛と腰痛を主訴に近医を受診し, 膠原病の疑いにてステロイド治療, 抗菌薬 (sulbactam/cefoperazone, SBT/CPZ) の投与が行われたが改善せず, 全身状態がさらに悪化したため, 精査・加療目的で当センターに転院搬送された。血液検査とCT画像所見から, 化膿性脊椎炎・椎間板炎, 腸腰筋膿瘍による感染症と診断した。細菌検査により黄色ブドウ球菌が同定されたため, 感受性のある適切な抗菌薬の使用, 免疫グロブリン製剤の投与, さらには膿瘍ドレナージなどを実施したが, 病態は改善しなかった。このため第22病日から高気圧酸素 (hyperbaric oxygen, HBO) 治療を併用した。HBO治療には以前から言われていた効果に加えて, 好気性菌に対する様々な効果が報告されている。本症例でも, HBO治療後に臨床症状や画像所見の改善が認められたことから, こうした効果が感染症の病態改善に寄与した可能性が高い。HBO治療は従来の疾患のみならず, その適応を拡大していくべき治療法であると考えられた。

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© 2007 日本集中治療医学会
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