抄録
【目的】外科的介入を行った敗血症性disseminated intravascular coagulation(DIC)における遺伝子組み換え型ヒト可溶性トロンボモジュリン(recombinant human soluble thrombomodulin, rTM)併用投与の効果を検討した。【方法】重症敗血症で集中治療管理を要したもののうち,外科的処置で感染巣をコントロールした症例を対象とした。従来のアンチトロンビン(antithrombin, AT)のみで治療したAT群と,rTMを併用投与したAT+rTM群に分け,治療開始7日目までの臓器障害,凝血学的指標などの継時変化および治療転帰を後ろ向きに比較検討した。【結果】AT群で第1日目にAT活性値が低かったが,第3・5・7病日のDIC score,Sequential Organ Failure Assessment(SOFA)score・P/F比,血小板数・FDP値・AT活性値に有意差がなかった。両群の60日生存率は100%であり,集中治療管理・人工呼吸器・透析管理日数も差がなかった。【結語】敗血症性DICの治療の原則は感染巣の治療である。外科的介入で感染巣をコントロールが可能な場合,ATとrTMの併用療法に明らかな必要性は認めなかった。