抄録
【目的】我が国の高齢化は急速に進行しており,救命救急センターに搬送される超高齢者も増加している。ADL(activities of daily living)不良や認知症も多く,ICUでの治療の適応を迷う場合もある。今回,集中治療を要した超高齢者の転帰と予後因子について検討した。【方法】2009年1月~2011年12月に救命救急センターICUに入院した90歳以上の非外傷性疾患の患者66人を対象に,患者背景,入院後の手術・処置,転帰を後方視的に調査した。【結果】年齢の中央値は92歳で,来院時にliving willを確認できた例は皆無であった。転帰は在院死19人,退院19人,転院28人であり,転退院した47人の6か月後,1年後の生存率はそれぞれ74.3%,54.7%と不良であった。単変量解析では男性,認知症,ADL不良,施設入所者が,多変量解析では男性とADL不良が予後規定因子であった。【結論】超高齢者の集中治療の適応に関しては年齢のみで判断することはできず,患者本人と家族の意思および患者背景を汲みながら症例ごとに慎重に方針を決定する必要がある。