2017 年 24 巻 2 号 p. 216-226
生命維持治療に関する医師による指示書(Physician Orders for Life-sustaining Treatment, POLST)は,事前指示の長い実践経験の延長上に米国で提唱された概念であり,指示内容に心停止時に心肺蘇生をしないDo Not Attempt Resuscitation(DNAR)を包含している。日本集中治療医学会倫理委員会は,DNAR指示の誤解と誤用が多い本邦においてPOLSTに基づくDNAR指示が可能かについて検討を加えた。POLST運用基盤は本邦では脆弱であり,急性期医療領域で合意形成がないPOLSTを検証なく導入し運用することに危惧がある。DNAR指示の正しい理解と運用が先決案件であり,現時点でPOLST(DNAR指示を含む)の使用は推奨できないと結論した。