抄録
合併症のない心筋梗塞患者61例を対象として,CCU入室後の急性期において,他動的に体位を仰臥位から側臥位に変換した際の血圧,HR,およびpressure-rate-product(PRP)の変化を5分毎に自動血圧監視装置で観察し適正な体位変換の方法について検討した。体位変換を開始したのは平均17時間で,体位変換時全例において収縮期血圧(sBP),およびPRPの有意な変化,ならびに合併症などの発現は認められなかった。しかし,個別の6例においてsBPの15%以上の下降が示され心筋梗塞患者における神経・体液性因子の異常による循環調節機転の失調が示唆された。また仰臥位保持による腰痛の訴えは78.7%に認められた。したがって,急性期における体位の保持に際しては,腰痛が出現しないように適宜側臥位に体位を変換することが重要であるが,その際sBPが大きく下降する事例に注目し,合併症の発現を監視しなければならない。