抄録
欧米では劇症肝炎の治療として肝移植が普及している。しかし,肝移植はfulminant hepatic failure(強いて訳せば劇症肝不全)という症候に対する「究極的対症療法」であり,劇症肝炎という疾患に対する根本療法ではない。
劇症肝炎に対する根本療法とは肝不全症状に適切に対処しつつ,急激に進行する肝細胞破壊を食い止めること,つまり,肝炎を治療することにほかならない。この観点から筆者は独自に開発した強力な人工肝補助療法により患者の生命を保障しつつ基礎疾患としての肝炎の治療(ウイルス性であれば抗ウイルス剤と免疫抑制薬投与,自己免疫性と薬剤性であれば免疫抑制薬投与)を行っている。この結果,過去3年半での救命率は23/31(74.1%)[急性型13/17(76.4%),亜急性型10/14(71.4%)]であった。現在は劇症化を早期に予知して肝炎治療を開始することにより,全例の救命を目指している。