日本集中治療医学会雑誌
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5 巻, 3 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 与芝 真
    1998 年5 巻3 号 p. 181-191
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    欧米では劇症肝炎の治療として肝移植が普及している。しかし,肝移植はfulminant hepatic failure(強いて訳せば劇症肝不全)という症候に対する「究極的対症療法」であり,劇症肝炎という疾患に対する根本療法ではない。
    劇症肝炎に対する根本療法とは肝不全症状に適切に対処しつつ,急激に進行する肝細胞破壊を食い止めること,つまり,肝炎を治療することにほかならない。この観点から筆者は独自に開発した強力な人工肝補助療法により患者の生命を保障しつつ基礎疾患としての肝炎の治療(ウイルス性であれば抗ウイルス剤と免疫抑制薬投与,自己免疫性と薬剤性であれば免疫抑制薬投与)を行っている。この結果,過去3年半での救命率は23/31(74.1%)[急性型13/17(76.4%),亜急性型10/14(71.4%)]であった。現在は劇症化を早期に予知して肝炎治療を開始することにより,全例の救命を目指している。
  • 清水 浩, 小川 雄之亮
    1998 年5 巻3 号 p. 193-201
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    肺サーファクタントの絶対的欠乏による新生児呼吸窮迫症候群(respiratory distress syndrome; RDS)に対する人工肺サーファクタント補充療法は,未熟児の救命率を飛躍的に向上させた。一方,肺サーファクタントが機能的に阻害された病態(胎便吸引症候群,肺炎,急性呼吸窮迫症候群,肺出血)に対しても,この補充療法が検討されている。また肺低形成では,RDS類似の肺の未熟性がみられ,出生後早期に人工肺サーファクタントを投与することによって,呼吸機能の改善が期待できる。最近,人工肺サーファクタント投与による免疫系細胞の機能抑制の問題が明らかにされており,また親水性肺サーファクタント蛋白質の肺局所免疫としての役割がクローズアップされて,次世代の人工肺サーファクタント開発にあたっての問題点を提起している。
  • 石原 弘規, 鈴木 朗子, 高村 かおり, 谷津 祐市, 木村 尚正, 大友 教暁, 坪 敏仁, 松木 明知
    1998 年5 巻3 号 p. 203-210
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    侵襲の大きな手術の術後に生ずる細胞外液の中心部への移動をブドウ糖初期分布容量(IDVG)により評価できるか否かを,術後直接ICUへ入室した食道癌手術患者を中心とした21例を対象として検討した。ICU滞在中毎日ブドウ糖5gとインドシアニングリーン(ICG)25mgを中心静脈ラインより30秒で投与し,その前後で動脈血を採取した。IDVGは投与後3~7分,ICGを用いた血漿量(PV-ICG)は投与後3~11分の血漿濃度により1分画モデルで算出し,計104点で検討した。術後3日目には術当日ICU入室時に比し,両算出値は増加した(P<0.05)。この時ヘマトクリット値は低下し(P<0.05),また体重の増加はなかった。さらに両算出値間には正の相関関係(r=0.68,n=104,P<0.001)が認められた。IDVGは術後見られる体液の移動を反映し,体液管理に有用である。
  • 伊藤 智範, 宮尾 雄治, 伊藤 彰, 矢野 理子, 良本 佳代子, 宮崎 俊一, 後藤 葉一, 野々木 宏
    1998 年5 巻3 号 p. 211-215
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    ヘパリンと硝酸薬の点滴は狭心症の安定化に有効であり,両薬物はしばしば併用される。しかし,ニトログリセリン(NTG)はヘパリンの効果を低下させるという報告がある一方,硝酸薬には抗ヘパリン作用はないとする報告もある。そこで,硝酸薬がヘパリンの抗凝血作用へおよぼす影響について検討した。第1プロトコール:急性冠症候群12例を対象とし,ヘパリンを一定量持続点滴し,5時間ごとにNTG・硝酸イソソルビド・NTGの順に交互に点滴静注を行った。第2プロトコール:安定狭心症と胸痛症候群の9例を対象とし,ヘパリンを単独で点滴投与し,その後硝酸薬と併用し,再びヘパリンを単独で点滴した。点滴変更直前にそれぞれ活性化凝固時間・活性化部分トロンボプラスチン時間・アンチスロンビンIIIを測定した。いずれの検討でも硝酸薬はヘパリンの効果を減弱させることはなく,日本人の薬物療法としてその併用に問題はないと考えられた。
  • 丹野 英, 布宮 伸, 清水 可方, 窪田 達也
    1998 年5 巻3 号 p. 217-220
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    頭蓋咽頭腫全摘出術後に40℃を超える高体温につづき横紋筋融解症に陥った症例を経験した。ICU入室後,直ちに全身冷却,wash-out療法,持続血液濾過透析を開始し,併せてダントロレン,メチルプレドニゾロン,メシル酸ガベキサート,ウリナスタチンなどの投与を行った。これらにより体温は速やかに低下したが,激烈な多臓器不全と代謝性アシドーシスが進行し,ICU入室後2日目に死亡した。本症例の横紋筋融解症発症の原因として,手術による視床下部の損傷に伴う異常高体温が考えられた。視床下部周辺に損傷を来す可能性のある頭蓋内手術後は,体液管理のみならず,発熱に対する速やかな原因検索と処置が必要である。
  • 松影 昭一, 長田 直人, 井上 卓也, 古川 貢之, 高崎 眞弓
    1998 年5 巻3 号 p. 221-225
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    甲状腺クリーゼにより拡張型心筋症様の病態を示し,うっ血性心不全と肝不全が発症した患者を,血漿交換を含む集中治療を行い救命した。44歳の男性。15年前から振戦と発汗があった。感冒様症状に,黄疸,チアノーゼ,心房細動を伴った急性循環不全でICUへ入室した。血中GOT (glutamic oxaloacetic transaminase)とLDH (lactate dehydrogenase)はそれぞれ11,454IU・l-1と20,292IU・l-1で,左心室拡張期径は56mm,駆出率は0.2であった。第2病日に測定した血中甲状腺ホルモンが高値で,甲状腺刺激ホルモンが低値であったため甲状腺クリーゼと診断した。肝不全の改善と血中甲状腺ホルモンの軽減を目的に血漿交換を行った。増加した総ビリルビン値(29mg・dl-1)は,2か月後に正常に戻った。本症例のように重篤な心不全と肝不全に陥った甲状腺クリーゼの場合,血中の甲状腺ホルモンの正常化には血漿交換が非常に有効であると考えられた。
  • 清水 直樹, 中村 知夫, 鈴木 康之, 阪井 裕一, 宮坂 勝之, 二瓶 健次
    1998 年5 巻3 号 p. 227-230
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
    難治性てんかんの18歳女性。入院後,チオペンタール持続静脈内投与を開始したところ,呼吸状態悪化のため人工呼吸管理となった。第5病日には乏尿となり集中治療室入室。入室時の心機能は良好であった。第7病日までにチオペンタールを中止したが,第11病日より再び乏尿となり,駆出率は48%,収縮率は24%と低下した。最終的なチオペンタール総投与量は650mg・kg-1にも至っていたが,血中濃度は一貫して通常治療域値内であった。
    バルビツレート療法の副作用として,直接心筋抑制作用が知られている。本例では,チオペンタールの血中濃度が正常範囲内であったにもかかわらず心機能障害を生じた点が特異であった。チオペンタール持続静脈内投与では,薬物動態の特性上,副作用が遷延して出現する可能性がある。なお,バルビツレート療法は,厳重な呼吸循環管理が可能なICUなどの施設内で開始することが原則であると考える。
  • 坪 敏仁, 木村 尚正, 大友 教暁, 石原 弘規, 松木 明知
    1998 年5 巻3 号 p. 231
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2009/03/27
    ジャーナル フリー
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