難治性てんかんの18歳女性。入院後,チオペンタール持続静脈内投与を開始したところ,呼吸状態悪化のため人工呼吸管理となった。第5病日には乏尿となり集中治療室入室。入室時の心機能は良好であった。第7病日までにチオペンタールを中止したが,第11病日より再び乏尿となり,駆出率は48%,収縮率は24%と低下した。最終的なチオペンタール総投与量は650mg・kg
-1にも至っていたが,血中濃度は一貫して通常治療域値内であった。
バルビツレート療法の副作用として,直接心筋抑制作用が知られている。本例では,チオペンタールの血中濃度が正常範囲内であったにもかかわらず心機能障害を生じた点が特異であった。チオペンタール持続静脈内投与では,薬物動態の特性上,副作用が遷延して出現する可能性がある。なお,バルビツレート療法は,厳重な呼吸循環管理が可能なICUなどの施設内で開始することが原則であると考える。
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