冠攣縮性狭心症を合併した褐色細胞腫症例を経験した。患者は20歳女性。胸部不快感,動悸を訴え,プレショック状態で受診した。劇症型心筋炎,心筋症,膠原病,虚血性心疾患などの鑑別のため冠動脈造影(coronary angiography, CAG)を施行した。冠動脈は正常であったが,アセチルコリン(acetylcholine,Ach)負荷で著明な冠攣縮が誘発され,冠攣縮性狭心症と診断した。その後時々,高血圧発作があり再入院となった。検査の結果,左傍神経節腫(paraganglioma)と診断され,腫瘍摘出術が施行された。術後2ヵ月目にCAGを施行したが,Achに対する易攣縮性は著明に改善していた。われわれはカテコラミン心筋症(catecholamine induced cardiomyopathy)の要因の1つと考えられる冠攣縮を初めてCAGで証明した。またその機序として,高カテコラミンによるα1刺激以外に直接的なカテコラミンによる内皮機能障害の可能性も示唆された。