情報通信学会誌
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論文
固定インターネット回線品質に対する消費者意識の分析
―ネットワーク中立性議論との関連に着目して―
実積 寿也
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2011 年 29 巻 1 号 p. 1_19-1_28

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抄録

ネットワーク中立性問題は、(1)トラヒック混雑による外部不経済の発生と、(2)ボトルネック事業者による市場支配力の濫用、という二つの課題として整理すればその理論的解決策は明確であるが、それら解決策は、現実のインターネットエコシステムの中では実現困難である。本稿では、ベストエフォート環境下における実効品質に対する消費者の関心度に着目し、当該関心の欠如は、利用者の意思決定の効率性を阻み、トラヒック混雑の認識を不十分にすることを通じて、ネットワーク中立性問題の解決に困難をもたらすことを指摘した。そのうえで、2009年に実施したアンケート調査を用い、実効速度に対して関心を有する利用者を拡大すれば、トラヒック混雑問題を市場メカニズムによって改善できる余地が増大する可能性があること、さらに、FTTHの利用増大、トラヒック混雑の経験がそういった利用者層を増やす効果があることを明らかにした。

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© 2011 情報通信学会
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