情報通信学会誌
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論文
放送法上の番組編集準則の位置づけに関する「営業の自由」の観点からの再構成論
海野 敦史
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2011 年 29 巻 1 号 p. 1_29-1_42

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抄録

従来の学説においては、「放送の自由」が表現の自由の一環であることを前提としつつ、法律上の番組編集準則がなぜ表現の自由の制約として認められ得るのかが問題とされ、これに対する多様な見解が提示されてきた。しかし、(1)行為としての放送は、コンテンツの制作・編集・送信という一連のプロセスや送信に必要となる電気通信設備の設営、放送事業体の運営を不可欠の要素として行われるものであり、これらを包括する概念は「表現」ではなく「営業」(又は職業の遂行)であること、(2)番組編集準則は、コンテンツの「制作」そのものを何ら規制するものではなく、原則としてその「編集」を規制するものであるから、表現の自由に対する制約としては、表現内容の規制というよりもむしろ表現方法 (放送という方法) の規制に相当する規制であると考えられること、などにかんがみると、番組編集準則は主として営業の自由の客観的側面の保障のための積極的措置として定位されるべきであり、表現の自由との関係においては、付随的な制約と捉えることができるものと解される。このとき、営業の自由の客観的側面の保護法益は、大半の放送が事実上国民全体を相手方とする営業活動であることにかんがみ、放送を通じて一定の秩序の下における多様な情報が安定的に提供されることをその具体的な内容とするものと解され、番組編集準則がそれに適合的であると認められる限り、立法権の合理的な裁量の範囲内で設けられた措置であると考えられる。したがって、このような観点から、「放送の自由」との関係における番組編集準則の合憲性が肯定されるべきものであると考えられる。

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