抄録
万一の大規模地震災害に備えて,基幹的な灌漑用水路における災害対応力を強化することが喫緊の課題である.本研究では,頭首工と開水路からなる典型的な灌漑用水路の施設管理を対象に,FTA手法を適用し,大規模地震発生後の初動から取水ゲート閉鎖による安全確保に至るまでの災害対応が遂行不能になる原因を特定するとともに,その原因発生を防止する対策の有効性を定量的に評価した.その結果,震度6強以下の震災であれば,施設管理において実施可能な対策を講じることにより一定の対策効果が期待でき,おおむね計画どおりの災害対応が遂行できることが分かった.しかし,震度7の震災となれば,その対策効果はほとんど期待できず,取水ゲートを閉鎖する災害対応の遂行は困難になることが示された.また,このことから最大級の大規模地震に備えた事業継続計画の必要性が示唆された.