抄録
フィルダムの基礎や堤体などに存在する亀裂は水圧等により進展し水理破砕を生じさせる危険性があるが, その進展条件はほとんど検討されていない. 破壊力学では亀裂進展を評価するパラメータの一つとして応力拡大係数KIが用いられるが, フィルダムにおいては堤体や基礎の形状等によりその算定が困難な場合が少なくない. そこで, 応力拡大係数とともに亀裂進展のパラメーターとして考えられているJ積分を用い粘性土における亀裂進展の評価を試みた. J積分の算定には引張試験の結果と有限要素解析により行った. その結果, 算定されたJ積分の値は初期亀裂長によらず同程度の値となった. これにより, J積分は粘性土においても亀裂の進展を評価するパラメーターとして用いることができると考えられる.