農業土木学会論文集
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2006 巻, 242 号
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
  • 前田 滋哉, 河地 利彦, 張 琴
    2006 年2006 巻242 号 p. 151-157
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ある流域内の点源・面源に対し, 全窒素排出負荷の許容最大量を割り当てるため, 多目的線形計画モデルを定式化する. 流域地表面をグリッドに分割することにより, GIS (地理情報システム) を用いた水文解析や最適化モデルへ入力するための多種データの取り扱いを容易にする. 最適化の目的規範として, 制御可能な流域内汚染源からの総許容排出負荷量の最大化に加えて, 米の総収量最大化を導入する. 流域における自浄作用を流下距離に依存した一次反応式で表し, 最適化における主要制約条件として, 流域末端部で全窒素の総量規制を課す. 開発したモデルを滋賀県のある流域に適用し, 考慮する各目的規範に対する意思決定者すなわち流域管理者の選好を反映した点源・面源に対する許容全窒素排出負荷量の最適配分能力を例証する.
  • ケム ソティア, 後藤 章, 水谷 正一
    2006 年2006 巻242 号 p. 159-167
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    メコン川は典型的なモンスーン気候下にある河川の特徴として雨季・乾季できわめて大きな水位変動を呈する。本研究では洪水氾濫との農業形態と関係を分析するため, 氾濫過程を再現できる基礎モデルを構築した。洪水氾濫解析モデルはメコン川流域モデル, トンレサップ湖モデル, デルタ水収支モデルの3つのモデルから構成される。メコン川流出モデルとして, 3段4列の下に下層地下水1段を考慮した3×4+1型のタンクモデルをPakse地点からKompong Cham地点までの流域に適用した。このモデルによってメコン川本流からデルタ地帯への流入量, トンレサップ湖水位の季節変動とモデル地帯への流入量, そしてデルタ地帯での水収支などが良く再現された。最後に上のモデルから得られる流入量からデルタ水収支モデルの構築を試みた。これらによりデルタ地域の洪水氾濫モデルの基本構造の大枠を提示することができたものと考える。
  • 後藤 眞宏, 小林 宏康, 浪平 篤, 常住 直人
    2006 年2006 巻242 号 p. 169-177
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    都市化, 混住化の進展に伴つて, 頭首工や落差工などからの落下水音が環境公害として認識されるようになつた. そこで堰下流面角度が90°と30°の場合における越流堰の落下水音の音響特性について実規模模型を用いた水理実験により検討した. この結果, 1) 堰下流面角度が300 (斜面流) の場合, 90° (落下流) と比較してG特性値, A特性値がともに低減し, 落下水騒音の対策として有効であること, 2) 落下流の場合, 斜面流と比較して3Hzより高い周波数帯で音圧レベルが高くなり, 特に10Hz近傍で音圧レベルが卓越する傾向を示すこと, 3) 落下流の流れのエネルギが低周波音のエネルギに変換される率は約6×10-6倍で, 斜面流では約1/30の約2×10-7に低減することなどを明らかにした.
  • 末継 淳, 佐藤 孝, 金田 吉弘, 佐藤 敦
    2006 年2006 巻242 号 p. 179-187
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    表面排水による土壌流出は, 土壌養分の減耗と周辺水系の水質悪化の原因となっている. しかし, 粘土質の農地土壌の流出特性を正確に再現できる理論の適用は十分ではない. 本研究では, 土壌の液性限界値と土壌懸濁液の粘性を考慮した土壌流出モデルを提案し, スルースゲート装置・掃流水路を用いた実験と水田の代かき排水時の調査結果と比較した. その結果, 土壌の固相率を低下させ過ぎると, 排水時の土壌流出量が著しく増大することが確認された. この傾向は, 液性限界値を評価した本研究のモデルで再現できた. しかし, 団粒構造が発達した火山灰土では, 土壌流出量が小さく推定された. また, 農地での表面排水時の土壌流出が排水口付近で非常に局所的に生じることが, 水田の湛水深・洗掘深測定で確認され, 本研究のモデルでも再現されたが, 圃場での正確な土壌流出量の予測は今後の課題となった.
  • 多田 明夫, 吉村 亮佑, 田中丸 治哉, 畑 武志
    2006 年2006 巻242 号 p. 189-198
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文では, 面積12.82haの山林小流域において, 10分間隔の流量と15分間隔の水質値を用い, 約6.2ケ月の期間について種々の推定方法により負荷量を算出し, その精度について議論を行った. 対象とした水質項目は溶存イオンのCl-, K+, Na+である. 全期間を対象に, 等間隔サンプリングを前提として, 単純平均法, 流量加重平均法, べき乗型のLQ式による方法, 直線型LQ式による方法を用いて負荷量を算出・評価した結果, 直線型LQ式による推定が最良であることが示された. 降雨イベント単位の負荷量の良好な推定のためには, 等間隔サンプリングではなく流量変化を考慮したサンプリングが有効であること, 全期間中の降雨時流出負荷量の推定法として提案されているΣL-ΣQ法とL-R法は, 調査対象流域においては, 週1度の等間隔サンプリングよりも精度の面において劣ることが明らかとなった.
  • 山本 尚行, 三原 真智人
    2006 年2006 巻242 号 p. 199-205
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では植生帯による土壌および窒素・リン成分の捕捉能の維持方法として, 植生帯, 表面流集水渠, 逆浸透性沈砂池を組み合わせた土壌保全システムを検討した. 高い降雨強度下で入工降雨実験を行った結果, 過剰な表面流去水のみを表面流集水渠で分水したことで植生帯に流入する表面流量を調整でき, 高い水準で植生帯の土壌および窒素・リン成分の捕捉能を維持できた. 一方, 植生帯および表面流集水渠を併設した逆浸透性沈砂池からの土壌および窒素・リン成分の総表面流出量は表面流集水渠を併設しない場合と有意な差が見られなかった。しかし, 沈砂池の堆砂量を大幅に低減できたことから植生帯, 表面流集水渠, 逆浸透性沈砂池を組み合わせた土壌保全システムは各保全対策の機能を高い水準で維持するとともに, 維持管理の観点から土壌および窒素・リン成分の流出制御に関して有効な対策であると判断できた.
  • 浪平 篤, 後藤 眞宏, 小林 宏康
    2006 年2006 巻242 号 p. 207-215
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    我が国の頭首工の魚道として最も採用数が多い階段式魚道の設計指針は概ね纏められているが, 魚道内の流況の予測手法は確立されていない. 階段式魚道内の流況形態は勾配や流量の違いにより大きく変化するため, より適切な設計を実現するには, その予測手法の開発は必要である. そこで本研究では, 一般座標系に適用したVOF法と, 改良LKモデルとDurbinモデルを適用した標準型k-εモデルを用いて, 実務設計のための階段式魚道内の流況の数値解析手法を構築した. そして, 実物規模の水理模型を用いた実験結果との比較により, 本手法は越流水深が変化したときの詳細な流速分布および水面形状の違いを精度よく再現できることを明らかにした.
  • 近藤 文義, 豊満 幸雄, 武藤 勲
    2006 年2006 巻242 号 p. 217-223
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    粘土の沈降様式と沈定容積は, 粘土粒子の凝集の程度や堆積物の微細構造を反映した物理的指標である. 本論では高膨潤性スメクタイトの沈降様式と沈定容積に及ぼす酸化鉄の影響について検討した・その結果, 酸化鉄含有量が多いほど凝集の程度がより強い沈降様式へ移行し, 酸化鉄はスメクタイトの凝集性を高める要因であることが明らかとなった. また, 沈定容積は何れの酸化鉄含有量の場合においても塩濃度の低下に伴い増加し, 酸化鉄を添加したスメクタイトは高膨潤性粘土としての特性を維持した. 一方, 塩濃度が低い場合には酸化鉄含有量が多いほど沈定容積は若干減少し, 酸化鉄は僅かながらスメクタイトの膨潤性を低下させるものと推定された.
  • 佐藤 勝正, 佐藤 政良
    2006 年2006 巻242 号 p. 225-233
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    サブ・サハラ・アフリカの多くの国では, 効率的かっ持続的な灌漑のために農民参加型水管理の導入が試みられている. そこでは財源となる水利費の徴収と運用が極めて重要である. しかし農民の水利費支払いのインセンティブは低く, 徴収率の低下が問題となっている. 本研究は, 日本の協力により西アフリカガーナ国で1997年から7年間実施された「灌漑小規模農業振興計画」が取り上げた2つのモデル地区を対象に水利費の管理に関する調査を行い, これらの地区に, 徴収率の高低など水利費管理に対照的な違いが生じていることを示し, その原因を分析した. そして, 水利費の徴収率を高めるためには, 組合活動と資金管理の透明性を保つことで水利費支払いの必要性意識を高めることに加え, 水利費の一部を営農活動として運用するなど, 水利以外の外部条件の利用も効果的であることを示した.
  • 西村 眞一
    2006 年2006 巻242 号 p. 235-240
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    フィルダムの基礎や堤体などに存在する亀裂は水圧等により進展し水理破砕を生じさせる危険性があるが, その進展条件はほとんど検討されていない. 破壊力学では亀裂進展を評価するパラメータの一つとして応力拡大係数KIが用いられるが, フィルダムにおいては堤体や基礎の形状等によりその算定が困難な場合が少なくない. そこで, 応力拡大係数とともに亀裂進展のパラメーターとして考えられているJ積分を用い粘性土における亀裂進展の評価を試みた. J積分の算定には引張試験の結果と有限要素解析により行った. その結果, 算定されたJ積分の値は初期亀裂長によらず同程度の値となった. これにより, J積分は粘性土においても亀裂の進展を評価するパラメーターとして用いることができると考えられる.
  • 森 牧人, 三森 崇道, 平松 和昭, 四ヶ所 四男美
    2006 年2006 巻242 号 p. 241-247
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年, GPS気象学の発展に伴い, GPSのネットワークを利用して大気中の可降水量を見積もることが可能になった. 本研究では, まず, 北部九州の平野 (佐賀平野) で得られたGPS可降水量と地上水蒸気圧のデータを対象に解析を行った. 両者は季節的に明瞭に変化し, 高い相関を持つことが示された. 次に, 可降水量と地上水蒸気圧の理論的関係について検討した. 大気中の水蒸気密度が高度とともに指数関数的に減少すると仮定することにより, 両者が比例することが導かれ, この関係は観測結果と概ね整合した. さらに, 最寄りの高層気象観測点のデータから水蒸気密度の代表的な高さを算出し, それを用いてGPS可降水量をもとに現地の月平均地上水蒸気圧を推定する簡便式が提案された. 同式により推定された地上水蒸気圧は実測値とよく一致した.
  • 西村 圭市, 武田 育郎, 福島 晟, 宗村 広昭
    2006 年2006 巻242 号 p. 249-255
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    夏季の農業排水路に生息する水生動物の多様性 (魚類・水生昆虫類) と水生動物の多様性に影響を与えると考えられる環境因子との関係を考察した. 島根県安来市の水田地区において, 2004年7月に, 魚類, 水生昆虫類, 水質, 水路の物理的環境 (水深・流速・水路の護岸部・植生被覆率・水面下の土壌占有率・水路幅) について調査を行った. 調査対象地では, 魚類に関しては11種水生昆虫類に関しては14種確認された. また, それぞれの調査地点において, 魚類, 水生昆虫類に区分してShannon-Wienerの多様性指数を算出し, 水質および物理的環境との間で重回帰分析を行った. その結果, 魚類に関しては, T-N, DO, COD, SS, 植生被覆率, 水面下の土壌占有率が重要な環境因子であるとの結果が得られた. 同様に, 水生昆虫類に関しては, DO, NO2-N, 植生被覆率, 水面下の土壌占有率, 水路幅が重要な環境因子であるとの結果が得られた.
  • 森 淳, 水谷 正一, 中村 真人
    2006 年2006 巻242 号 p. 257-264
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ヨモギ (Artemisia princeps) の水耕栽培の結果, 硝酸態窒素およびアンモニア態窒素を吸収する際いずれも大きな同位体分別は起きないことが明らかになった. ポット栽培の無機肥料区ではヨモギの窒素安定同位体比 (δ15N) は肥料の値に近くなったが, 有機肥料区では肥料より低くなった. 過湿区のうち硝酸カリウム区と有機肥料区では通常灌水区よりδ15Nが有意に高く, 脱窒の発生が示唆された. また, 小貝ヶ池の硝酸態窒素のδ15Nは15.8‰, 水際で採取したヨモギのδ15Nは10.7%。, 窒素を降雨に依存するヨモギのδ15Nは-3.6‰となった. このことから水際のヨモギが利用した窒素の約3/4が溜池由来であると試算された.
  • 左村 公, 岡澤 宏, 島田 沢彦, 中村 好男
    2006 年2006 巻242 号 p. 265-272
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    農村地域を対象に, 震災時に地域避難所までの避難経路となる道路に道路閉塞状況を考慮して, 地域避難所までの避難労力を評価した. また, 未利用期間の水田を避難経路に加えることで, 農村地域における避難労力を評価した. 各自治地区に設置された地域避難所は, 地区内のどこからも1km圏内に存在していたが, 避難経路に道路閉塞を加味したところ, 震災時の避難活動に要する避難労力が増加した。また, 未利用期間の水田を避難経路に加えることで農村地域の避難労力を検討したところ, 避難経路の面積は, 道路のみを避難経路とする場合の4倍増加し, 地域避難所までの避難労力が減少した.
  • 合崎 英男
    2006 年2006 巻242 号 p. 273-274
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
  • 山岡 賢, 柚山 義人, 中村 真人
    2006 年2006 巻242 号 p. 275-276
    発行日: 2006/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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