抄録
ネパールのヒ素汚染地域において, 土壌のヒ素含有量と物理・化学的性質との関係について検討した. 農地土壌においては, 150mg/kgを超えるヒ素含有量はみられなかった. この場合, 陽イオン交換容量の高い土壌ほどヒ素含有量が多いことが明らかとなった. ボーリングコア試料においては, 深さ10~11mの黒色系のピート層中において150mg/kgを超えるヒ素の集積が認められ, この層に元来含まれていたヒ素は微生物等の作用によって容易に地下水中へ溶脱され得るものと推定された. また, ボーリングコア試料においては, 粘土分含有量, pH, 陽イオン交換容量のそれぞれが高い土壌においてヒ素含有量が多いことが明らかとなった.