地下水位の高い地点における掘削工事では, 掘削地盤のパイピングやボイリングなど, 浸透破壊が問題となる. 近年, 大規模構造物の建設に伴い, 大深度掘削が行われるようになり, 浸透破壊に関して新たな問題が生じている. ここでは, 鋼矢板土留め壁掘削地盤における浸透破壊事例を取り上げ, 掘削地盤の浸透破壊安定性に関して, 従来の基準類による安全率の算出, 土留め形状を考慮した安全率の算出, 浸透流解析及び浸透破壊に対する安定解析を行い次の結論を得た.(1) 従来の二次元単列矢板条件を対象にした解析法は, 大深度掘削地盤の浸透破壊に対する限界水頭差を実際の値よりも大きく見積もる.(2) 土留め形状補正を用いて, 掘削平面を矩形形状または円形形状と考えた場合, 妥当な限界水頭差を与える.(3) 出口動水勾配から限界水頭差
Hcを求める方法では,
Hcの値が大きく計算され不合理な結果を与える.(4) 浸透破壊安全率は, 二次元単列矢板条件に対して軸対称条件の場合0.40倍となる.
抄録全体を表示