農業土木学会論文集
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2007 巻, 248 号
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  • 金子 綾, 三原 真智人, 駒村 正治
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 131-136
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    東京都多摩市を中心とする地域において, 畑地圃場の客土履歴の有無および肥料施用と中型土壌動物相の多様性の関連を調べた. 客土後の耕作期間は25年程度である. 多様度の評価にはSimpsonの多様度指数の逆数1/λおよびFisherの多様度指数α+1を用いた. 客土履歴の有無による個体数・属数・多様度の差は見られなかったが, 2種の多様度指数の差をとると, 客土圃場ではSimpsonの多様度指数が大きく非客土圃場ではFisherの多様度指数が大きい傾向を示した. 水分の安定が中型土壌動物増加に寄与するとされており, 非客土圃場では保水性に影響する団粒構造や腐植等が客土圃場より発達していると考え, 2種の多様度指数の差から圃場の成熟度合いを知ることができると考察した. また, Fisherの多様度指数では施肥量を説明変数1とした重回帰式が得られ, 肥料施用は中型土壌動物相のFisherの多様度を増加させると考えられた.
  • 高 綉紡, 高瀬 恵次
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 137-143
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本論文では, 愛媛県内に設置した棚田流域および山林地流域で15年間にわたって観測された水文データに基づいて, 降雨に対する応答の早い流出成分からなる早い直接流出, および比較的応答の遅い流出成分も含む遅い直接流出を分離し, 両流域の特性を比較・検討した. その結果, 小さな降雨に対してはいずれの直接流出率も棚田流域の方が大きく, 総降雨量が大きくなるとその差が小さくなる傾向にあること, また, 棚田流域では灌漑期の直接流出率が非灌漑期よりも大きいことが明らかとなった. 次に, 直接流出を水収支的に考察して両流域の浸透特性を比較. 検討し, 棚田流域の浸透強度は山林地より小さいこと, 棚田流域での灌漑期と非灌漑期の浸透強度はほぼ同じであることを明らかにした. また, 初期土湿不足量が直接流出に与える影響についても検討した.
  • 廣瀬 哲夫, 田中 勉
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 145-156
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    地下水位の高い地点における掘削工事では, 掘削地盤のパイピングやボイリングなど, 浸透破壊が問題となる. 近年, 大規模構造物の建設に伴い, 大深度掘削が行われるようになり, 浸透破壊に関して新たな問題が生じている. ここでは, 鋼矢板土留め壁掘削地盤における浸透破壊事例を取り上げ, 掘削地盤の浸透破壊安定性に関して, 従来の基準類による安全率の算出, 土留め形状を考慮した安全率の算出, 浸透流解析及び浸透破壊に対する安定解析を行い次の結論を得た.(1) 従来の二次元単列矢板条件を対象にした解析法は, 大深度掘削地盤の浸透破壊に対する限界水頭差を実際の値よりも大きく見積もる.(2) 土留め形状補正を用いて, 掘削平面を矩形形状または円形形状と考えた場合, 妥当な限界水頭差を与える.(3) 出口動水勾配から限界水頭差Hcを求める方法では, Hcの値が大きく計算され不合理な結果を与える.(4) 浸透破壊安全率は, 二次元単列矢板条件に対して軸対称条件の場合0.40倍となる.
  • 藤田 信夫, 毛利 栄征, 岸田 隆行
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 157-164
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    パイプラインの屈曲部にはその角度に応じた曲管を用い, 内水圧に対してスラスト防護工の設置を検討するのが一般的である. 継手構造管路においては直管の継手の伸縮可とう性を活用して曲線的に布設し, 屈曲角度の小さい曲管を省略することにより, 設計の自由度が高まるとともに建設コストの縮減が可能になる. しかしながら屈曲した継手部に内圧によるスラストカが作用する際の管路挙動は明らかにされておらず, 適用事例も限定的である.
    本論では, 模型管路による繰り返し内圧負荷実験を行い, 同一角度の曲管と曲線布設との土中挙動を比較した. その結果, 内圧スラストカによる屈曲部の変位は曲線布設の方が小さく, 各継手が均等な変位を生じて曲管よりも広い範囲に抵抗土圧が生じることを確認した. また既往の安全性検討式を用いて, 曲線布設においても曲管と同様に検討できることを明らかにした. さらに, 屈曲部のパイプラインをシェルとバネ要素でモデル化した数値シミュレーションを行い, 継手管路の内圧負荷時挙動が実験と合致することを確認した.
  • 橋本 禅, 佐藤 洋平
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 165-170
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    近年の, 自然環境や生態系の保全, 良好な景観の形成, 農業・農村の多面的機能に対する国民的関心の高まりは, 農業・農村を巡る利害関係概念を拡大させ, 計画行政のあり方に影響を与えている. 今後の計画過程では, これまで以上に多様な主体の参加と合意形成が必要になる. 適切な参加主体の選定と参加プロセスの設計・運営を行うためには, 計画過程への参加が求められる根拠を明確にする必要がある. このような認識に立ち, 本稿では, 今後の農村計画における参加主体の選定に関わる論理の構築に資するべく, 既往研究における言説の整理・検討を行った. これにより, 計画過程への参加は1)行政がもつ計画裁量権の統制, 2) 関係者の権利利益の保護, 3) 計画の民主性の向上の三つの観点から求められることを明らかにした. また, 現行の農村計画制度において, これら三つの観点に対してどのような配慮がなされているかを議論した.
  • 安瀬地 一作, 木ノ瀬 紘一, 島田 正志, 田中 忠次
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 171-176
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    多自然型水路などに見られる植生群は, 多種多様な動植物の生息環境を提供し, 豊かな自然環境を創出する. しかし, これらの植生群は流れに対して抵抗となるため, ビオトープなどの多自然型水路の設計には十分な植生群の抵抗評価が必要となる. 現在, 植生群を有する開水路ではManning式を用いて, Manning粗度係数に経験的に一定値を与えることでの抵抗計算が行われている. しかし, その数値選定の根拠に乏しく信頼性も検証されていない. 本研究では, 植生群を有する流れの流速分布から植生群を有する流れのManning粗度係数のモデル化を行った. 模型実験による実測値との比較により, そのモデルの妥当性を検証した.
  • 齋 幸治, 原田 昌佳, 吉田 勲, 平松 和昭, 森 牧人
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 177-184
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    フィードバック型ニューラルネットワークモデルを用いて, 富栄養湖における底層DOのリアルタイム予測を行った. その結果, 予測精度ならびに限界リードタイムは季節によって異なり, とくに夏季の限界リードタイムは2h程度と短かった. そこで, モデルの精度の向上を図るために, ウェーブレット解析によるノイズ処理を導入した・また・DO時系列を低・高周波数成分の2成分に分解し, これらを入力データとすることでDO時系列の時間一周波数特性を考慮したネットワークを再構築した. その結果, 予測誤差は大幅に減少し, 限界リードタイムも3~5倍の改善が見られた. さらに, 成層度パラメータを入力層に付加したところ, それによるモデルの精度の向上はほとんど見られなかった・そのため, 底層DOの予測に関して, 入力項目は過去の底層DOのみで充分な予測が可能であると考えられた.
  • 新潟県上越市大島地区における事例検討
    有田 博之, 山本 真由美, 大黒 俊哉, 友正 達美
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 185-190
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    今日のわが国における耕作放棄農地の増大による農地面積の減少は, 長期的な食料需給への対応の不安定性を拡大している. これに対する解決策として, 筆者等は耕作放棄農地をいつでも利用可能な状態で粗放管理する方法を提案している. 本論では, 従来の研究では検討されていなかった湿性圃場について, 粗放管理の妥当性を経済的観点から評価するため, 復田コストと放棄年数の関係を事例調査に基づいてモデル化した. 調査は, 積雪地帯である新潟県上越市大島地区で行った, この結果,(1) 湿性圃場でも復田コストはロジスティック曲線への当てはめが可能であり,(2) 復田コスト・復田総費用は乾性圃場とほぼ類似の経年変化をたどるが,(3) 価額は乾性圃場に比べて湿性圃場で低い傾向があることを明らかにした.
  • 千葉県北総東部用水事業を例として
    猪口 琢真, 河野 英一, 笹田 勝寛, 石川 重雄
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 191-199
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 千葉県北総東部用水事業の受益地区内の灌漑施設を有して25年を経た露地普通畑灌漑地区を事例とし, 気象, 作付および地区レベルにおける使用水量の各変化の調査後検討を2000~2004年の5年間にわたって行い, 気象変化, 作付変化および地区レベルの使用水量変化の相互関係から地区レベルの水利用実態を把握した. また, 5年間における地区レベルのTRAM残量の変化を算出し, その結果を基に正常生育有効水分の良好な充足状況および用水計画諸元の妥当性を把握して, 露地普通畑地区の畑地灌漑への本地区およびわが国の用水計画の適応性も検証した.
  • 西村 伸一, 滝澤 倫顕, 村山 八洲雄, 村上 章
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 201-209
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    岡山県児島湖の浚渫土脱水ケーキを対象に, 物理・化学特性や力学特性を調べている. 特に, 脱水ケーキを盛土材として使用することを考慮し, 脱水ケーキの締固めが, 圧縮特性や透水特性およびせん断強度に与える影響を明らかにした. また, 浚渫土を乾燥処理して使用する場合も考慮して, 乾燥による特性変化も検討した。結果, 脱水ケーキ片を締め固めると, 透水性を効果的に低下させるのが可能なこと, 乾燥処理を施すと透水性が著しく増大することが明らかとなった. さらに, セメント改良した試料の一軸圧縮試験を実施した結果, 試料の含水比と強度には一定の関数関係があり, 乾燥処理によってより高強度を得られることが分かった.
  • 近藤 文義, 杉本 安寛, 豊満 幸雄, 横田 漠
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 211-217
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    ネパールのヒ素汚染地域において, 土壌のヒ素含有量と物理・化学的性質との関係について検討した. 農地土壌においては, 150mg/kgを超えるヒ素含有量はみられなかった. この場合, 陽イオン交換容量の高い土壌ほどヒ素含有量が多いことが明らかとなった. ボーリングコア試料においては, 深さ10~11mの黒色系のピート層中において150mg/kgを超えるヒ素の集積が認められ, この層に元来含まれていたヒ素は微生物等の作用によって容易に地下水中へ溶脱され得るものと推定された. また, ボーリングコア試料においては, 粘土分含有量, pH, 陽イオン交換容量のそれぞれが高い土壌においてヒ素含有量が多いことが明らかとなった.
  • 門松 經久, 籾井 和朗, 肥山 浩樹, 小路 順一
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 219-227
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
    本研究では, 畑地かんがい事業の合意形成に対応する行政の基礎的知見を得るため, 南薩地区を対象として, 野菜類・原料用甘藷・茶により集落を類型区分 (集落類型) し, 農業者の事業への関心事項について検討を行った. また, 露地野菜・施設園芸・原料用甘藷の単作農業者 (単作類型) を設定し, 集落類型と同様の検討を加えた. その結果, 茶類型と施設園芸単作では「収益性」や「作業性」に対する重視度のほか,「生産の安定」や「必要時の散水」に対する重視度が高く, 水を生かす積極的営農志向が強いといえる. 原料用甘藷では「生産の安定」等に対する重視度が低く, 従来の営農形態を基本とする保守的営農志向が強く, 畑かん営農にとっての課題が指摘される. 露地野菜単作では「収益性」等に対する重視度で施設園芸単作と原料用甘藷単作の中間に位置するなど, 積極的営農志向が必ずしも強くないことが明らかになった.
  • 中 達雄, 端 憲二
    2007 年 2007 巻 248 号 p. 229-230
    発行日: 2007/04/25
    公開日: 2011/08/11
    ジャーナル フリー
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