2005 年 15 巻 3 号 p. 48-58
遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm : GA)が探索空間内から唯一の大局解を求めることを目的としているのに対して, 複数の局所解探索に適するという優れた性質を持つ免疫システムがある.この免疫システムは, 近年GAと融合する試みが行われており, その一つとして免疫システム型GAが提案されている.しかし, この免疫システム型GAには, 長い世代進化を続けると唯一の大局解に収束してしまうという現象が起こり得る.本論文では, 免疫システムにおけるサプレッサT細胞がリンパ球前駆細胞から分化したB細胞の産生を抑制する機構を模倣して類似した個体が増え過ぎないようにする抑制機構と局所探索を免疫システム型GAに導入し, 対象画像内から2次元的な姿勢自由度を持つ複数の部分画像領域を探索する手法を提案する.提案手法における抑制機構は, 個体の多様性を維持し, 長い世代進化を続けても唯一の大局解に収束することなく, 大局解を含めた複数の局所解を探索できる効果がある.