情報知識学会誌
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生成AIをめぐるSNS上の議論の争点 ―発話分析による価値観の可視化―
松下 瑚南村井 源
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キーワード: 価値観, 対立, SNS, 生成AI
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2025 年 35 巻 2 号 p. 188-196

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抄録

 近年,SNS上での複雑化した対立は争点の不明瞭化により収束が困難となっている.本研究では, 従来の研究では行われてこなかった,人々の持つ価値観に着目することによる争点の明示化を目的 として,「生成AI」の賛否を議題とし,SNS上の発話に対し価値観のアノテーションに基づいて計量的な分析を行った.本論では,KJ方を用いて発話から価値観を23種類に分類し,議題に対する賛否ご との価値観間の共起度と,ネットワーク分析により各賛否における価値観の中心性を比較した.結果, 本議題に対する議論は,利益追求と科学技術の発展を重視する「功利主義」を中心とした肯定的発話群と,「著作権重視」を中心としつつも複数の価値観が混在する否定的発話群により構成されていることが判明した.特に,「功利主義」と「著作権重視」の価値観は同時保持が困難であり,これが主要な争点として機能している可能性が示された.

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