日本関節病学会誌
Online ISSN : 1884-9067
Print ISSN : 1883-2873
ISSN-L : 1883-2873
原著
有限要素解析を用いた寛骨臼形成不全に対するPeriacetabular osteotomyの骨片移動方向の検討
北村 健二本村 悟朗濵井 敏川原 慎也佐藤 太志山口 亮介原 大介宇都宮 健中島 康晴藤井 政徳
著者情報
ジャーナル 認証あり

2023 年 42 巻 2 号 p. 36-40

詳細
抄録

目的:寛骨臼形成不全(DDH)に対するperiacetabular osteotomy(PAO)の至適な骨片の移動方向・移動量については定まった指標がない。本研究の目的は,PAOにおいて,股関節の力学的環境を最適化する骨片の移動方向・移動量を明らかにすることである。

方法:DDH患者(LCE角<25°)の32例32股(全例女性,平均年齢40歳,平均LCEA 9°)を対象とした。股関節CT DICOM dataを用い,立位骨盤傾斜を再現した上で有限要素解析を行った。LCEA 30°・35°・40°に前方回転0°・5°・10°・15°を追加した12通りのPAOシミュレーションを行い,片脚立位想定時の寛骨臼軟骨の接触面積・最大接触圧力(Max CP)を算出した。正常ボランティア16例16股の結果からMax CPの正常範囲は4.1MPa未満とした。

結果:前方回転(−)よりも前方回転(+)で接触面積は増加し,Max CPは減少した。12通りのPAOシミュレーションの中で,Max CPが正常化する割合はLCE角30°+前方回転15°のときで87.5%(27/32股)と最も多く,続いてLCE角35°+前方回転15°のときで84.4%(27/32股)であった。

考察:PAOの際,寛骨臼の側方回転に前方回転を追加することで接触面積は増大し,接触圧力は減少した。症例により骨片の至適位置は異なるが,LCE角30°~35°に前方回転を15°追加した際,Max CPは最も正常化しやすいことが示唆された。

著者関連情報
© 2023 日本関節病学会
前の記事 次の記事
feedback
Top