日本関節病学会誌
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42 巻, 2 号
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Editorial
原著
  • 北村 健二, 本村 悟朗, 濵井 敏, 川原 慎也, 佐藤 太志, 山口 亮介, 原 大介, 宇都宮 健, 中島 康晴, 藤井 政徳
    2023 年 42 巻 2 号 p. 36-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル 認証あり

    目的:寛骨臼形成不全(DDH)に対するperiacetabular osteotomy(PAO)の至適な骨片の移動方向・移動量については定まった指標がない。本研究の目的は,PAOにおいて,股関節の力学的環境を最適化する骨片の移動方向・移動量を明らかにすることである。

    方法:DDH患者(LCE角<25°)の32例32股(全例女性,平均年齢40歳,平均LCEA 9°)を対象とした。股関節CT DICOM dataを用い,立位骨盤傾斜を再現した上で有限要素解析を行った。LCEA 30°・35°・40°に前方回転0°・5°・10°・15°を追加した12通りのPAOシミュレーションを行い,片脚立位想定時の寛骨臼軟骨の接触面積・最大接触圧力(Max CP)を算出した。正常ボランティア16例16股の結果からMax CPの正常範囲は4.1MPa未満とした。

    結果:前方回転(−)よりも前方回転(+)で接触面積は増加し,Max CPは減少した。12通りのPAOシミュレーションの中で,Max CPが正常化する割合はLCE角30°+前方回転15°のときで87.5%(27/32股)と最も多く,続いてLCE角35°+前方回転15°のときで84.4%(27/32股)であった。

    考察:PAOの際,寛骨臼の側方回転に前方回転を追加することで接触面積は増大し,接触圧力は減少した。症例により骨片の至適位置は異なるが,LCE角30°~35°に前方回転を15°追加した際,Max CPは最も正常化しやすいことが示唆された。

  • 金井 賢太, 崔 賢民, 手塚 太郎, 池 裕之, 秋山 豪介, 稲葉 裕
    2023 年 42 巻 2 号 p. 41-44
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル 認証あり

    背景:変形性股関節症に対する人工股関節全置換術(THA)は,疼痛を改善し良好な術後を収めることが報告されているが,術前より姿勢が不良な患者では,歩行能力や股関節機能の術後改善が乏しいことも報告される。本研究の目的は,変形性股関節症における脊椎・骨盤アライメントに影響する体幹・股関節周囲筋について調査することである。

    方法:対象は片側変形性股関節症の女性患者58例で,術前の患者の脊椎グローバルアライメントとしてsagittal vertical axis(SVA)を,骨盤アライメントとしてpelvic tilt(PT)を計測した。これらの患者において,術前CT画像から3D-Slicerソフトウェアを用いて大殿筋,中殿筋,大腰筋,傍脊柱筋を三次元化し解析を行って,脊椎・骨盤アライメントとの関連について調査した。

    結果:変形性股関節症において,患側の大殿筋,中殿筋,大腰筋の筋質量は,健側と比較して有意な低値を示し(P<0.05),これらの筋力の低下はSVAの上昇と有意な相関を認めた。また傍脊柱筋質量の低下は,SVAの増加およびPTの増加と有意な相関を認めた(P<0.05)。

    考察:片側変形性股関節症患者では,患側のみでなく健側の体幹や股関節周囲筋も姿勢の維持に関与していることや,傍脊柱筋質量の低下は脊椎・骨盤のインバランスに影響していることを検証した。傍脊柱筋の筋力保持が姿勢の保持に重要であることが推測される。

  • 釜田 祥史, 富岡 政光, 鹿野島 祐子, 藤巻 洋, 松原 譲, 稲葉 裕
    2023 年 42 巻 2 号 p. 45-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル 認証あり

    背景:骨粗鬆治療の効果判定のためには骨密度の経時的変化を観察することが一般的であるが,同一患者群における骨密度変化率を統計学的に比較検討した過去の報告はない。

    目的:同一患者における骨密度変化率の測定部位間での差,関係性を調査すること。

    方法:対象は当院でDXAによる骨密度測定を複数回施行した患者107例(平均年齢77.1歳,男性21例/女性86例,治療介入88例)。腰椎正面(L),全大腿骨近位部(TH),大腿骨頚部(FN)における骨密度の1回目測定値と比較した2回目測定値の変化率を比較検討した。

    結果:L,TH,FNの初回YAM値(101.2±31.7%,77.1±13.5%,67.8±11.1%)には3群間に差を認めた(P<0.001)が,骨密度変化率(0.1±6.1%,1.3±14.2%,0.4±11.6%)は差を認めなかった(P=0.31)。LとTH(R=0.20,P=0.04),LとFN(R=0.30,P=0.002),THとFN(R=0.44,P<0.001)での変化率にそれぞれ正の相関を認めた。

    考察:本研究ではFNのYAM値が低値であり,骨密度の変化率は測定部位間で有意差を認めず,各測定部位の変化率に正の相関を認めた。骨粗鬆症の薬物治療効果判定にはLでのDXAが推奨されているが,最もYAM値が低いFNの値を観察し骨粗鬆症治療における薬物治療効果評価を行うことも有用と考えられた。

  • 川口 航平, 山神 良太, 河野 賢一, 鹿毛 智文, 村上 亮, 武冨 修治, 田中 栄, 乾 洋
    2023 年 42 巻 2 号 p. 54-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/31
    ジャーナル 認証あり

    はじめに:人工膝関節手術に対しての術後患者立脚型評価が標準化しているが,術後患者立脚型評価には術前の心理的因子が影響すると報告されている。しかしTKA,UKAにおいての術前の心理的因子の違いや術後患者立脚型評価に与える影響の違いなどは明らかではない。本研究の目的はTKAとUKAにおける術前の心理的因子の違いとその心理的因子が術後臨床成績に与える影響の違いを明らかにすることである。

    方法:2018年10月から2021年3月に当科にて人工膝関節手術を行った症例で,術後1年以上の臨床成績の評価が可能であったTKA192膝とUKA43膝を対象とした。術前心理的因子は痛みに対する中枢性感作の評価スコアであるCSIと破局的思考の評価スコアであるPCSにて評価した。術後患者立脚型評価として術後1年でのKOOS,New Knee Society Scoreを使用した。TKAとUKAでの術前心理的因子の違いと術前心理的因子と術後患者立脚型評価の関連の違いを評価し2群で比較した。

    結果:術前心理的因子であるCSIはTKA群23.5,UKA群21.5,PCSはTKA群27.3,UKA群26.1とともに両群で有意差はなかった。CSIと術後患者立脚型評価の関係は,TKA群では術後患者立脚型評価のすべての項目で負の相関を示したが,UKA群ではすべての項目と相関がなかった。PCSと術後患者立脚型評価の関係では,TKA群では立脚型評価のすべての項目で負の相関を示したが,UKA群ではKOOSのADLとNew Knee Society Scoreの満足度の項目のみ負の相関を示した。

    結論:TKAとUKAにおいては術前心理的因子(中枢性感作,破局的思考)には差がなかった。しかしTKAとUKAにおける術前心理的因子(中枢性感作,破局的思考)が術後患者立脚型評価に与える影響の程度は異なっていた。

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