背景:骨粗鬆治療の効果判定のためには骨密度の経時的変化を観察することが一般的であるが,同一患者群における骨密度変化率を統計学的に比較検討した過去の報告はない。
目的:同一患者における骨密度変化率の測定部位間での差,関係性を調査すること。
方法:対象は当院でDXAによる骨密度測定を複数回施行した患者107例(平均年齢77.1歳,男性21例/女性86例,治療介入88例)。腰椎正面(L),全大腿骨近位部(TH),大腿骨頚部(FN)における骨密度の1回目測定値と比較した2回目測定値の変化率を比較検討した。
結果:L,TH,FNの初回YAM値(101.2±31.7%,77.1±13.5%,67.8±11.1%)には3群間に差を認めた(P<0.001)が,骨密度変化率(0.1±6.1%,1.3±14.2%,0.4±11.6%)は差を認めなかった(P=0.31)。LとTH(R=0.20,P=0.04),LとFN(R=0.30,P=0.002),THとFN(R=0.44,P<0.001)での変化率にそれぞれ正の相関を認めた。
考察:本研究ではFNのYAM値が低値であり,骨密度の変化率は測定部位間で有意差を認めず,各測定部位の変化率に正の相関を認めた。骨粗鬆症の薬物治療効果判定にはLでのDXAが推奨されているが,最もYAM値が低いFNの値を観察し骨粗鬆症治療における薬物治療効果評価を行うことも有用と考えられた。
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