抄録
「遺伝子の配列を読む」…その技術は今世紀に入り革命的な進化を遂げている。今や、1台のシークエンサーを使用して、わずか1日で、ヒトゲノムの10-100 倍以上の塩基配列を決定できるようになっている。今世紀に入り、こうした次世代シークエンサーを活用して環境中の培養の困難な微生物の機能を明らかにしようとする環境ゲノム情報解析研究が、欧米を中心に盛んに行われてきている。一方で、コッホ、パスツールの時代から100 年以上にわたって行われてきた、「未知なる微生物を分離培養してその深遠な生物機能を探る」…という未知微生物探索研究はどのような進展を遂げてきたのであろうか。本稿では、この大量シークエンス情報解析の時代の中で、古典的、時代遅れと見なされがちな未知微生物探索研究の現状と課題を概観しつつ、今後の展望とその可能性について論じたい。