日本乳酸菌学会誌
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総説
乳酸菌給与による小腸応答の部位差
塚原 隆充
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2019 年 30 巻 1 号 p. 32-37

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抄録

乳酸菌の機能性・安全性を確かめるため、モデル動物を用いた試験研究が広く行われている。しかし、曖昧な試験設定では、乳酸菌の効能を見落としてしまう可能性がある。今回は、経口で投与した乳酸菌が感作・機能する主要な器官のひとつである小腸に焦点を当て、小腸を厳密にサンプリングする重要性について注意を喚起したい。小腸は、全体が均一的に乳酸菌に対して応答しておらず、部位によっては反応が不明瞭な場合がある。乳酸菌給与による小腸の構造的な応答である絨毛伸長効果を無給与対照群と比較したところ、小腸の中央部や回盲部では良好な応答が認められたが、全く応答しない部位も存在した。小腸には、腸管免疫を担うパイエル板(PP)が存在する。予め乳酸菌を給与したマウス小腸の最前部(胃側)にある PP と回盲部 PP を採取し、サイトカインの mRNA 発現を解析したところ、乳酸菌給与による応答は両者で異なった。また、PP におけるサイトカイン mRNA 発現は、乳酸菌感作後時間でも異なっていた。以上より、乳酸菌の機能性をモデル動物で検討する場合、小腸の採材部位についてとくに注意を払う必要があり、解剖時間についても考慮する必要がある。

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© 2019 日本乳酸菌学会
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