日本乳酸菌学会誌
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30 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 田中 尚人
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻1 号 p. 3-7
    発行日: 2019/03/14
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    乳酸菌は多岐にわたってヒトの生活に貢献する有用な微生物であり、資源として今後もさらに開拓されていく主要微生物であることは間違いない。長年に渡る乳酸菌の研究により、乳酸菌の性質をうまく活用した効率的な分離技術が確立されているため、微生物を扱う基本的な技術があれば、初めてであっても容易に分離できる。ここでは特にこれから乳酸菌の分離を始める方を対象に、乳酸菌という生き物についての説明も交えながらその乳酸菌の分離方法と乳酸菌を分離する時に知っておくべきことおよび考えるべきことについて述べる。

  • 岡野 憲司
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻1 号 p. 8-17
    発行日: 2019/03/14
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    要約:乳酸菌の遺伝子組換え実験は、使用する菌株が研究者によって異なることや、ツールの入手が困難であることから、経験のない研究者が一から立ち上げるのは非常に骨が折れる作業である。本総説では、筆者が乳酸菌の遺伝子組換えと培養実験をゼロから立ち上げてきた経験をもとに、乳酸菌の宿主・ベクター系の選定、形質転換、発現系の最適化、遺伝子破壊/ 挿入、組換え体を用いた培養実験という一連の実験を円滑に実施するための手がかりを提供したい。

  • 善藤 威史, 岩谷 駿, 園元 謙二
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻1 号 p. 18-26
    発行日: 2019/03/14
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    細菌がリボソーム上で合成する抗菌ペプチドであるバクテリオシンのうち、とくに乳酸菌によって生産されるものは安全な抗菌物質として食品保存などへの利用が期待される。優れた特性をもつ新奇バクテリオシンが広く探索され、その構造決定や生合成機構、作用機構の解明のために、生合成遺伝子群の機能解析が行われている。バクテリオシンの生合成に関わるタンパク質群は、バクテリオシン前駆体遺伝子の近傍にコードされて生合成遺伝子群を形成しており、バクテリオシンの分泌を担うトランスポーターとバクテリオシンから自身を保護する自己耐性タンパク質をコードする遺伝子のほか、バクテリオシンによっては翻訳後修飾や生産制御に関わるタンパク質をコードする遺伝子が必要となる。これら生合成遺伝子群の機能は、種々のペプチドへの修飾構造の導入や分泌生産への応用も期待される。本稿では、我々が発見した新奇乳酸菌バクテリオシンの実例を中心に、生合成遺伝子群の取得からその機能解析について紹介する。

  • 井上 亮
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻1 号 p. 27-31
    発行日: 2019/03/14
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    腸内細菌叢が腸管の疾患以外にも、代謝疾患や精神疾患など様々な疾患に関係することが明らかになり、腸内細菌叢の健康・疾患における役割が幅広い研究分野から注目されている。腸内細菌叢の解析方法は、伝統的な培養法から最新のメタゲノム解析法まで様々存在しており、それぞれに利点と欠点がある。これらの利点と欠点を理解したうえで、研究の目的から適切な解析方法を選択するのが理想だが、専門的な研究者でなければ難しく、近年では得られる情報量が多いメタゲノム解析がファーストチョイスとなりつつある。本総説では、このメタゲノム解析の流れや、得られる解析結果の解釈方法を、特に腸内細菌叢研究の初学者向けに解説する。

  • 塚原 隆充
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2019/03/14
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    乳酸菌の機能性・安全性を確かめるため、モデル動物を用いた試験研究が広く行われている。しかし、曖昧な試験設定では、乳酸菌の効能を見落としてしまう可能性がある。今回は、経口で投与した乳酸菌が感作・機能する主要な器官のひとつである小腸に焦点を当て、小腸を厳密にサンプリングする重要性について注意を喚起したい。小腸は、全体が均一的に乳酸菌に対して応答しておらず、部位によっては反応が不明瞭な場合がある。乳酸菌給与による小腸の構造的な応答である絨毛伸長効果を無給与対照群と比較したところ、小腸の中央部や回盲部では良好な応答が認められたが、全く応答しない部位も存在した。小腸には、腸管免疫を担うパイエル板(PP)が存在する。予め乳酸菌を給与したマウス小腸の最前部(胃側)にある PP と回盲部 PP を採取し、サイトカインの mRNA 発現を解析したところ、乳酸菌給与による応答は両者で異なった。また、PP におけるサイトカイン mRNA 発現は、乳酸菌感作後時間でも異なっていた。以上より、乳酸菌の機能性をモデル動物で検討する場合、小腸の採材部位についてとくに注意を払う必要があり、解剖時間についても考慮する必要がある。

  • 寺田 朋子, 坂本 光央, 清水 謙多郎, 門田 幸二
    原稿種別: 総説
    2019 年30 巻1 号 p. 38-45
    発行日: 2019/03/14
    公開日: 2020/05/20
    ジャーナル フリー

    Lactobacillus rhamnosus は、健康なヒトの胃腸粘膜からしばしば単離されるプロバイオティクス乳酸菌である。今回は、まず L. rhamnosus GG に関する 2 つのゲノム配列決定論文の内容を簡単に紹介する。そして、Gepard によるゲノムスケールのドットプロットを用いて、一部領域が反転している状況を確認する。次に公共データベース上で検索する際の Tips を述べ、この菌株の酸ストレス応答を調べた RNA-seq データ(SRP125628 or GSE107337)を取得したのち、実験デザインの解説を行う。今回の内容は、次回以降解説予定のマッピング・カウントデータ取得・発現変動解析を含む一連の RNA-seq データ解析を行うために必要なファイルの取得や全体像を把握する準備編という位置づけである。ウェブサイト(R で)塩基配列解析のサブ(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq2.html)中に本連載をまとめた項目(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq2.html#about_book_JSLAB)が存在する。ウェブ資料(以下、W)や関連ウェブサイトなどを効率的に活用してほしい。

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