2020 年 31 巻 2 号 p. 99-104
徳島県で伝統的に飲用される阿波番茶は、茹でた茶葉を桶に漬け込み、微生物で発酵させて作られる。本研究では、阿波番茶の漬け汁から分離した Lactobacillus pentosus OLL203984 を用いて茶発酵物を調製し、その摂取がマウスの便通、腸内細菌叢に与える影響を検討した。消化管通過時間の遅延症状を呈する Ncx/Hox11L.1 遺伝子ノックアウトマウスに茶発酵物またはコントロールとして水を 4 週間投与した。その結果、コントロール群と比べて茶発酵物群で、硫酸バリウムの消化管通過時間が有意に短縮した。なお、糞便水分含量に明らかな差は認められなかった。また、腸内細菌叢を解析した結果、茶発酵物の投与前と比べて投与後で、Bacteroidales、Clostridiales の存在比率の有意な減少、Lactobacillales、Bifidobacteriales の存在比率の有意な増加、α 多様性指数のひとつである Shannon index の有意な減少が認められ、コントロール群ではこれらの菌群および Shannon index に有意な変化は認められなかった。さらに、コントロール群と比べて茶発酵物群では、腸管運動への関与が知られる結腸の iNOS の遺伝子発現量が低下傾向にあった。以上より、L. pentosus OLL203984 で調製した茶発酵物の摂取は、腸内環境を変化させ、消化管通過時間の遅延を改善することが示唆された。