日本乳酸菌学会誌
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総説
乳酸菌の好気的流加培養
片倉 啓雄一瀬 涼神原 大樹
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2022 年 33 巻 1 号 p. 12-19

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抄録

乳酸菌は嫌気的に回分培養することが多いが、この環境では乳酸菌は著量の乳酸を副生するため、高密度に培養することは難しく収率も低い。乳酸菌が乳酸を生産するのは、ATP を得るために解糖系で消費する NAD+ をlactate dehydrogenase(LDH)で再生するためであるから、LDH 以外の NAD+ 再生系を利用するか、NAD+ 消費を伴わない系で ATP を得られれば乳酸生産を抑制できる。しかし、これらの代替経路は、解糖系での NAD+ の消費を十分に補えないことに加えて、その多くはグルコースで抑制される。従って、乳酸生産を抑制するには、代替経路の能力に見合う糖を徐々に流加し、代替経路を脱抑制することが重要である。代替経路のうち、酸素を電子受容体として NAD+ を再生する経路は炭素を浪費せず菌体収率の向上が期待できる。好気条件で流加培養を行い、更に、ヘムやメナキノンの添加によって呼吸鎖の形成をサポートすれば、高収率・高密度に乳酸菌を培養することができるだろう。

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© 2022 日本乳酸菌学会
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