日本乳酸菌学会誌
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総説
局在解析から明らかになった Bifidobacterium adolescentis によるヒト消化管内でんぷん顆粒の独占的利用
長柄 雄介大石 憲司
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2022 年 33 巻 3 号 p. 169-178

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抄録

腸内細菌叢を制御することで様々な疾患を治療あるいは予防できるという期待が高まっている。しかし、介入に対する腸内細菌叢の反応には大きな個人差があり、常在菌叢の個人差や細菌間の栄養獲得競争がこの背景にあると考えられる。本総説では、各腸内細菌種が腸内の競争的な環境で栄養を獲得するプロセスを調べる際、顕微鏡レベルでの細菌の局在がよい手がかりとなることを解説する。我々は便切片を用いて食物残渣と細菌の位置関係を探索し、Bifidobacterium adolescentis が腸内のでんぷん顆粒に住みついていることを発見した。この集住はでんぷん顆粒の摂取時に同菌種の保有者全員で観察され、また、同菌種はでんぷん顆粒の摂取により他菌種よりも優先的に、かつ大幅に増加した。同菌種の保有者と非保有者では、でんぷん顆粒摂取時に増加する主な細菌種、産生される主な有機酸、さらにでんぷん顆粒の消費効率が異なった。これらの結果は、細菌の集住がヒト腸内の固形栄養源の独占的かつ効率的な利用に寄与しうること、また、ひとつの栄養源の腸内および人体への作用は主たる集住菌種の有無により変わりうることを示している。

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© 2022 日本乳酸菌学会
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