日本レーザー医学会誌
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原著
薬剤排出トランスポーター蛋白(Breast Cancer Resistance Protein, BCRP)の発現と光線力学的治療(PDT)の抗腫瘍効果との関係
角田 佳彦臼田 実男今井 健太郎久保田 光博前原 幸夫大谷 圭志井上 達哉平田 剛史一ノ瀬 修二石角 太一郎山田 雅恵黒岩 ゆかり筒井 英光山田 公人古川 欣也奥仲 哲弥杉本 芳一加藤 治文
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2007 年 28 巻 4 号 p. 355-361

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抄録
癌薬物療法において薬剤耐性の出現は大きな障壁の1つである.特に薬剤排出ポンプによる薬剤の細胞外への排出に関しては,様々な種類のトランスポーターがクローニングされ,機能解析されている.我々はポルフィリン系薬剤の細胞外の排出にかかわるトランスポーター蛋白BCRP/ABCG2(Breast cancer resistant protein /ATP-binding cassette family G2)と光線力学的治療(photodynamic therapy: PDT)に使用する腫瘍親和性光感受性物質との関係について検討し,BCRP/ABCG2がPDTの抗腫瘍効果を減弱させてしまうのではないかと仮説した.
ヒト表皮癌細胞A431とBCRP/ ABCG2遺伝子を過剰発現させた細胞A431/BCRPを使用し,Photofrin®又はLaserphyrin®を用いてPDTを施行し,感受性試験を行った.
感受性試験の結果,Photofrin®-PDTではA431/BCRP細胞は親株A431細胞に比して耐性を示したが,Laserphyrin®-PDTでは,A431,A431/BCRPの2種の細胞で感受性に差異は認められなかった.さらにBCRP以外の薬剤排出ポンプであるMDR1,MRP1についても同様に感受性試験を施行したところ,Photofrin®-PDTはMDR1,MRP1の関与が示唆されたが,Laserphyrin®-PDTはMDR1,MRP1の発現に関係なく抗腫瘍効果を有することが明らかになった.各細胞におけるPhotofrin®-PDTのIC50によるDose Modifying Factorを比較した結果,MDR1では1.51,MRP1では1.61,BCRPでは1.83となり,BCRP のDose Modifying Factorが最も高いことが判明した.
さらに,BCRP阻害剤(Fumitremorgin C)の使用によりBCRPの機能を抑制することでPhotofrin®-PDT ではA431/BCRPの耐性が克服された.すなわちPhotofrin®は BCRPの基質となっており細胞外へ排出されることにより,PDTの抗腫瘍効果は減弱されることが示唆された.
以上より,Laserphyrin®-PDTは薬剤排出ポンプの発現に左右されることなく抗腫瘍効果を発揮していること,Photofrin®-PDTを施行するにはBCRP等の薬剤排出ポンプの発現パターンを確認することが大切であることが明らかになり,今後は2種類の光感受性物質を使い分けるテーラーメイド医療の必要性が示唆された.
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© 2007 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
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