抄録
5-アミノレヴリン酸(5-ALA)は細胞内でプロトポルフィリンIX(Pp-IX)に変わり,光照射によりPp-IX由来の一重項酸素を発生する.この一重項酸素は周囲の細胞や組織を傷害すると同時にPp-IX自身にも影響を与え,Pp-IXが波長635nmの光で照射されると670nmに吸収帯を持つ光生成物が出現する.そこで,5-ALAを投与した腫瘍細胞(9L,HeLa)およびHeLa胆癌マウスに635 nmの照射に加え670 nmの照射を行い,5-ALAを用いるPDTの効果増強の可能性を検討した.
光生成物を対象にした照射による一重項酸素の発生は9L細胞に比べてHeLa 細胞では少なく,またHeLa腫瘍ではこの照射による治療効果の増加は認められなかった.その原因としてHeLa細胞での5-ALAの取り込みの低さが考えられたが,PDT効果の増強のためには光照射法のさらなる検討が必要と思われた.