日本レーザー医学会誌
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原著
膀胱癌における5-aminolevulinic acid を用いた蛍光膀胱鏡下経尿道的腫瘍切除術および尿中剥離細胞に対する光力学的診断
藤本 清秀松村 善昭三宅 牧人千原 良友近藤 秀明穴井 智井上 剛志平尾 佳彦
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2009 年 30 巻 4 号 p. 399-404

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抄録

筋層非浸潤性膀胱癌(non-muscle invasive bladder cancer: NMIBC)のtransurethral resection of bladder tumor(TURBT)術後に高率に見られる膀胱内再発は,切除断端の残存腫瘍や従来の膀胱鏡では確認が困難な微小病変やcarcinoma in situ(CIS)などの平坦病変が一因となっている.また,low-grade NMIBCでは細胞診陽性率の低さが,膀胱癌の検出や経過観察において問題となっている.当施設における,NMIBCに対する5-aminolevulinic acid (5-ALA)を用いた蛍光膀胱鏡および蛍光細胞診による光力学的診断の臨床成績を報告する.臨床的に膀胱腫瘍と診断した患者34例に対して5-aminolevulinic acid(5-ALA)による蛍光膀胱鏡下TURBTの病理診断成績について検討した.29例が尿路上皮癌で,5 例は非尿路上皮癌組織(乳頭腫,扁平上皮仮生,過形成,炎症性肉芽)であった.尿路上皮癌29例から採取した223検体の解析では,蛍光膀胱鏡による尿路上皮癌の検出感度は96%,特異度は73%であった.白色光の膀胱鏡では確認できなかった随伴CIS(4検体)や異形成(8検体)が蛍光膀胱鏡で検出され,5-ALAに関連する膀胱刺激症状(grade1)を1例に認めた.また,尿路上皮癌患者20例において,尿中剥離した悪性細胞の蛍光細胞診およびフローサイトメトリーによる診断を行ったが,low-gradeあるいはlow-stageNMIBCにおける陽性率は従来型の尿細胞診より高かった.蛍光膀胱鏡下TURBTは安全性および信頼性の高いNMIBCの手術治療である.また,尿中に剥離した悪性細胞検出のための蛍光細胞診やフローサイトメトリーは,光力学的反応を利用したNMIBCの新たな診断システムとして有望であることが示唆された.

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