昭和医学会雑誌
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術中術後経過からみた開心術中の心筋保護効果の臨床的評価: 僧帽弁置換術症例を対象として
松田 賢高場 利博井上 恒一野元 成郎横川 秀男渡辺 俊明
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1986 年 46 巻 2 号 p. 215-225

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抄録
僧帽弁置換術症例50例を対象として, 心筋保護法の相異による術中・術後早期の臨床経過について検討した.対象群を心筋保護法により3群に分けた.すなわち, I群: 10例, 心臓局所冷却法のみによるもの, II群: 20例, 心臓局所冷却法にcardioplegiaとしてglucose-potassium液を併用したもの, III群: 20例, 心臓局所冷却法に酸素化晶質液であるSt.Thomas液によるcardioplegiaを併用したものである.3群の術前状態は年齢, 重症度に差はみられなかった.術中因子では体外循環時間, 大動脈遮断時間にI・III群間に差があり, III群が最も長時間を要していた.各群とも低体温法が併用されているが, III群が直腸温, 食道温ともに最も低温であった.術後経過ではtotal CK, CK-MB, GOTの変動をみたが, 各群ともにほぼ同様の変動を示した.total CKは術後は上昇し, 24時間までは1000IU/l前後で経過し, 1群がやや高値であった.CK-MBは術直後に最高値を示し, 以後漸減した.GOTも術後上昇し, 100IU/l前後で経過し, total CKと似た経過を示した.血清酵素学的には3群間の術後経過に差は見出せなかった.術後心機能についてみると, 心係数は各群ともに2.01/min/M2以上に保たれているが, この値を維持するための左房圧はI群が最も高く, III群は最も低く維持されており, また左室仕事量はI群が他の2群に比較して多い.術中術後に使用されたカテコラミンについてみてもI群では最も多く使用され, III群が少ない.対象例は全例僧帽弁疾患では術前状態に差がなく, また同一の僧帽弁置換術を施行されたものである.術中に心筋に与えた障害因子はIII群が最も多いにも拘らず, 術後血清酵素学的に3群に差のないこと, 術後早期の心機能の回復度はIII群が最もすぐれていることからみて, III群が最も有効な心筋保護が行われていたことを示すものである.臨床例の検討で, 複雑な因子が附加されるために明確な結果は得られなかったが, III群に使用された酸素化晶質液の心筋保護効果と低温維持が好結果をもたらしたものと考えられる.
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