抄録
近年, 骨髄におけるthrombopoiesisの本態が解明されつつあり, 流血中の血小板容積の変動が骨髄機能を反映することが明らかになってきた.そこで著者は, 小児における血小板数と血小板容積の変動に着目し, 悪性固形腫瘍における骨髄機能の評価法を作成し検討した.健常対照群として, 感染・炎症・出血凝固異常等のない135例を分析し, 血小板-平均血小板容積 (Mean Platelet Volume: MPV) のNomogramを作成した.血小板数は, 29.60±10.25×104/mm3, MPVは8.37±1.08flであった.小児においても従来の成人において報告されているのと同様にnon-linearな負の相関関係を認め, 正常の骨髄機能が営まれている場合には, MPVは血小板数と相関してNomogramを逸脱することなく変動した.小児悪性固形腫瘍5症例 (神経芽細胞腫2例, 横紋筋肉腫1例, Wilms腫瘍1例, Ewing肉腫1例) 計20クールにおいて, 化学療法・放射線療法による高度の骨髄抑制 (CCSGのToxicity Ratingにおいてgrade3以上) は13クールに認められた.血小板減少がみられるのと前後してMPVは低下し, Nomogramを逸脱して推移した.この傾向はクールを進めて骨髄抑制が強くなるに従って増強し, かつ回復までの期間も長かった.CCSG Toxicity Ratingによる骨髄抑制の程度が強くなるほどMPVは小さくなる傾向が認められた (p<0.01) .回復過程において, 血小板数の増加に先立ってMPVおよびPlateletcritは上昇し, 血小板容積分布曲線におけるピークも右方に偏位する傾向がみられた.これらの所見により骨髄機能の回復を予見することが可能であった.これらの客観的評価をより容易にするためにNomogramをA-Eの5領域に分類した.すなわち, 領域A・Bは血小板数10×104/mm3以上でMPVがNomogram範囲内にあり正常な骨髄機能が維持されている状態, 領域Cは血小板数10×104/mm3以上あるもののMPVがNomogram下限を下回り骨髄抑制が示唆される状態, 領域DはMPV・血小板数ともに低下し最も強い抑制が疑われる状態, 領域Eは血小板数は減少しているもののMPVは上昇しているいわゆる回復期と考えられた.患児の一般状態および従来の評価法とともに, この評価法を応用することにより小児悪性固形腫瘍の治療経過中の日々の骨髄機能の把握が日常診療上特別な侵襲もなく可能となり, 治療スケジュールの継続・中止・再開の判断の指標のひとつとしてきわめて有用と考えられた.