2021 年 Annual59 巻 Abstract 号 p. 535
無影灯は術中に患部を照らし術野の明るさ,無影性を確保するが,術者が体内深部を覗き込む手術では明るさが不十分である.これを補うためにヘッドライトが用いられている.術者の目線に合わせて光を照射できるが,装着により術者に負荷がかかる.そこで本研究では術者が体内をのぞき込むことが求められる手術において,十分な視野を得るための術部の明るさ確保を目指した照明器具の提案・試作と基礎特性の評価を目的とする.天井に設置されている無影灯に加え,切開部付近に照明の役割を果たす機器を設置することで,術部の明るさ確保を目指す.既存の単回使用開創器に着目し,切開部付近に設置可能な照明を試作し,照明機能の評価として,連続使用による発熱量と照明対象位置における照度分布の計測を行った.発熱量については,体表と接触する位置と照射対象位置に熱電対を取り付け,温度計測を行った.規格に基づき48℃を基準値とし,最大出力で3時間以内であれば基準値を下回り使用が可能であることを確認した.照度分布については試作機器と対象の距離を50mmと想定し,照明対象位置において照度計の場所を変化させ照度分布を計測した.照明対象位置中心部の照度は17585luxであり,外側に行くにつれて照度が低下した.基準値を規格に基づき2000luxとし,中心から80mmまでは基準値を満たすことを確認した.今後,術具挿入時の影の出来方等,実際の使用時の状況を想定した評価を行う.