抄録
本研究では,産業廃棄物処理における化学物質管理において特に着目すべき廃棄物種,処理方法,排出元の組合せを特定するために,PRTR届出移動量データを活用した廃棄物処理への化学物質移行の特徴整理を検討した。鉛化合物(物質番号305),トルエン(同300)を例とし,PRTR届出移動量データを集計整理によって化学物質移動量における主要な流れ(届出業種,処理方法,廃棄物の種類)を分析した。平成25年度の届出移動量については,鉛化合物は焼却・溶融や最終処分,トルエンは焼却・溶融が主要な移動先での処理方法であった。焼却・溶融への移動量を詳細に見ると,鉛化合物は鉄鋼業や非鉄金属製造業から排出される汚泥,トルエンは化学工業から排出される廃油の寄与が大きく,廃棄物処理における鉛化合物やトルエンの排出管理においては特にこれらの廃棄物に着目すべきであると考えられた。