2018 年 21 巻 1 号 p. 51-65
S-Dロジックがその提唱者であるVargo and Luschによって発表されて以来,10年以上経過した。実証論文が中心となる論文の中で,概念的な論文として提示されたこともあり,価値共創やサービスといった分野において数多く引用されている。しかし,S-Dロジックは,それぞれ一部分だけが議論されることが多く,そのため,その解釈や理解の上で,混乱も引き起こしてきた感がある。そこで,本稿は,S-Dロジックの主要な文献をサービス交換の性質と範囲という2つの視点からS-DロジックとG-Dロジックの対比,S-Dロジックの視点からの既存の研究領域への検討,S-Dロジックにおける価値の創造と共創,S-Dロジックの拡張という4つに分類し,それぞれを検討することで,S-Dロジックの全体像を検討する。その上で,S-Dロジックが交換をズーミングアウトすることでマーケティング現象を多面的に明らかにしようとしていることを踏まえた研究課題を提示する。