都市間競争における商業論の分析枠組みとしてCox et al.(1965)の「都市に奉仕する産業」「都市を形成する産業」モデル,都市経済学では移出ベース理論が既存研究として挙げられる。衛星都市の労働者は雇用圏である大都市に立地する産業(企業)へ通勤してきたが,以上のCox et al.のモデルおよび都市経済学の理論では都市間の産業移転を中心に議論されており,産業従事者を消費者としたうえでの「消費者の買い物出向に伴う所得の移転」については議論されてこなかった。同時に,労働による所得と消費の循環も都市間で発生するために大都市を中心に所得が偏在することになる。そこで,衛星都市内商業の活性化のために地元資本型企業主導による小売業の発展により衛星都市内部で事業所得の循環,雇用および消費支出の増加を図り,衛星都市の内生的発展を促すことが必要不可欠であると考え,商業論の観点から新たに都市間競争の枠組みの分析を試みた。