2021 年 5 巻 1 号 p. 33-39
企業におけるCSRに関わる活動は,企業の本部スタッフ部門が企業次元での活動として行うのが一般的であるが,製品事業部においても製品ブランディングとしての活動を展開することがある。本稿では,この製品次元のCSR活動が企業ブランディングのもとに統合的に管理されるのではなく,企業次元の活動とは独立して展開されやすく,活動間に異質性が表れるという現象を捉え,製品次元のCSR活動が企業次元の活動とはなぜ独立して展開されやすいのか,そのような2種類のCSR活動を並行的に展開することで,企業はどのようなCSRの追求を行うことになるのかという課題を企業の組織と管理に関する議論に基づいて考察する。そのうえで,製品事業の分権制が維持される企業においては,企業次元ではステークホルダー・コミットメントの追求,製品次元ではブランドマーケティングの追求という組み合わせで展開されやすいことを推論する。