2021 年 5 巻 2 号 p. 51-57
本研究は,消費者行動におけるモノの処分(Disposition)が自己構築に果たす役割を検討する上でのアプローチと課題を検討する。モノの処分は,消費者行動研究において消費者行動の一部と位置づけられながら,その数は長年限定的なものに留まってきた。しかし近年,所有者の自己構築との関連のもとモノの処分の役割を問う研究の蓄積が進みつつある。本研究は,所有者の自己構築とモノの処分の関係を明らかにしてきた既存研究を整理し,今後の研究の方向性を示す。取得や所有の局面で付与された過去の意味の清算という役割に加え,処分の意思決定過程を儀礼と捉えてその過程の中での新たな自己構築の様相に照射する研究や,その作用を長期的に考察する研究の重要性を示す。