抄録
エネルギー自給率の向上、地球環境問題の解決策の一つとして、安価に作製できる多結晶シリコンを用いた太陽電池の性能向上に期待が集まっている。本研究では、経験的ポテンシャルを用いた計算および第一原理計算のアプローチから、シリコン結晶粒界の原子構造、電子状態、不純物元素の影響を調べ、巨視的な物性であるエネルギー変換効率に影響する因子を、代表的な微視的構造である結晶粒界から見出す。これにより、多結晶シリコン太陽電池の高効率化を実現するための知見を得ることを目的とする。Tersoffポテンシャルを用いてデンドライト成長に対応させるために結晶方位を揃えた系について、結晶のエネルギーの回転角依存性、結合長・結合角分布を求め、粒界制御、方位制御の有用性を評価した。周期構造の原子数が数十から数百個以下のΣ粒界については第一原理計算コードVASPを用いて電子状態解析を行い、結合長・結合角の歪、奇数員環の有無と電荷密度分布の関係、不純物元素Cr,Fe,Ni,Cuの安定サイトについて検討した。