抄録
高等植物のPsbPは結晶構造解析がなされているが、光化学系II複合体(PSII)への結合部位の詳細に関しては不明である。以前、我々はPsbPの正・負電荷を消去する化学修飾法により、ホウレンソウPsbPがPSIIへ結合するためにはリジン残基の正電荷が重要であり、結合に関与している可能性がある6領域(Lys11-Lys14、Lys27-Lys38、Lys40、Lys90-Lys96、Lys143-Lys152、Lys166-Lys174)を見出した。今回は、これらの中で、どのリジン残基の正電荷が結合に直接関与しているかを決定するために、正電荷をもつリジン残基を電荷のないグリシン残基に置換したPsbPを作製し、PSII標品に対して再構成実験を行い、その結合能を調べた。その結果、Lys11-Lys14、Lys27-Lys38、Lys143-Lys152、Lys166-Lys174の4領域に存在するリジンをグリシンに置換したPsbPは、PSIIへの結合能が明らかに減少していた。これらの領域の中で高等植物間で完全に保存されている8つのリジン残基(Lys11、Lys13、Lys33、Lys38、Lys143、Lys166、Lys170、Lys174)を1つずつ置換したPsbPを作製し、それらの結合能を調べつつある。こうして得られた結果をPsbPの結晶構造に当てはめて議論する予定である。