日本重症心身障害学会誌
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Print ISSN : 1343-1439
一般演題
P-1-F4-11 口腔緊張により開口困難となる利用者への摂食援助
奈須 美佳柳沼 徳子
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2013 年 38 巻 2 号 p. 357

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抄録
はじめに 食事は本来楽しく食べることが理想的であるが、重症心身障害者は緊張が入りやすく、不随意運動の増強を誘発しスムーズな摂取が難しい。今回A氏は、口腔に緊張がはいりやすいため開口しづらくなりスムーズな摂取が困難となる場面が多く見られた。A氏の緊張の誘因を評価介入し改善が見られたので報告する。 問題点 (1)緊張が入り開口しづらくなることで、食事摂取が困難となる。 (2)A氏の摂食機能に合った水分のとろみの濃度が選択できていない。 目標 (1)スムーズな開口ができる。 (2)本人の機能にあった、水分摂取ができる。 援助方法 (1)食事時、以前70度であった車椅子の角度を頭部が前傾せず、頸部、背部の緊張が緩みやすい50度に変更した。車椅子の背部の押し付け予防のため、肩の下に専用枕を入れた。臥床中の補水時は、腰から頭部へと上半身が上がり頸部が伸びた状態にして、口腔周辺の緊張が緩むようにした。緊張の誘因と考えられる冷たい食べ物は、常温に近い温度で摂取するようにし、緊張の見られたときは、硬さの少ないポリプロピレンとエラストマー製のでんでんスプーンを使用した。 (2)A氏は、水分摂取時吸い上げる口唇の動きが見られるので、とろみの程度をカスタード状から、メープルシロップ状にして吸い上げられるようにした。 結果 食事の姿勢を整え緊張を取り除き冷たい食事と硬いスプーンを避けることで、スプーンが口唇の側に近づくと開口するようになり取り込みもスムーズになった。食事が中断することがなくなり、食事中笑顔がみられることもあった。水分のとろみの程度をメープルシロップの硬さに統一し、本人がスプーンから吸い上げられるようになった。食事は自分から開口して食べる、水分は自分から吸い上げるという能動的動作に変化した。
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© 2013 日本重症心身障害学会
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