抄録
Ⅰ.はじめに
2009年8月1日、花井丈夫氏(横浜療育医療センター、理学療法士)を代表に「重症心身障害理学療法研究会」が発足した。2013年に開催された、第5回セミナーのテーマは「動く」であった。今回「重症心身障害児(者)へのこれからのリハビリテーション」を理学療法の立場から述べる機会を与えられ、「動く」というテーマでいくつかの検討を行った。その結果、若干の知見を得たので報告する。
Ⅱ.方法
1.電動移動機器の使用が乳幼児の発達に及ぼす影響を検討するため、Jonesら1)、Gallowayら2)、Lynchら3)の3文献を用いて文献研究を行った。
2.重症心身障害児(者)にとって「動く」ことの制約因子の一つである重力に対して、Norman Lozinskiが開発したThe SPIDER 4)やTheraSuit Method 5)で使用されるUniversal Exercise Unitを参考に、体重免荷可能な「環境支援機器」(据置式・移動式)をイレクターで作製し、当園入所・外来利用児(者)に理学療法(以下、PT)を行った(図1)。
Ⅲ.結果
1.Jonesらによれば、20カ月の脊髄性筋萎縮症を持つ女児に対して電動移動機器を半年間使用させた結果、コミュニケーション、社会性、認知の領域で月齢の増加以上の発達を示した(BDI & PEDI使用)。Gallowayらによれば、リーチと把握が可能で、実用的な移動手段が未獲得の7カ月の正常乳児と、ほぼ同様の上肢機能と粗大運動機能を持つ14カ月のダウン症児でも電動移動機器の自発的操作が獲得されることを示した。またLynchらは、7カ月の二分脊椎を持つ男児の電動移動機器操作を実施した結果、半年後に認知、言語、巧緻運動の領域で生活年齢よりも高いスコアを獲得したことを示した(BayleyIII使用)。
2.体重免荷可能な環境支援機器を用いてPTを行った結果、徐々に下肢の屈曲や伸展の自動運動が表出し、四肢の他動運動に対する筋群の抵抗が著明に減弱した。また車いすや座位保持装置上での座位姿勢が安定し、介助歩行時の介助量も減少した。
Ⅳ.考察
文献研究の結果、乳児期から電動移動機器の自発的操作が獲得されるだけでなく、自ら「動く」ことが認知、言語、社会性領域等の発達に不可欠であることが示された。この意義は大きく、今後、PTプログラムに如何に反映させていくかを真摯に検討しなければならない。
また体重が免荷された環境で自動・他動運動を行うPTの有効性については定量評価による検討が必要である。この評価に関して筆者らは研究デザインを作成し、その研究デザインは日本理学療法士協会の「平成25年度理学療法に関わる研究助成」に採択されており、今後検討していく予定である。
最後に、筆者らが環境支援機器をイレクターで作製した時点では国内での販売はなされていなかったが、現時点では国内の業者による販売も開始されており6)、安全管理の面からも正規の製品の使用が推奨されると考える。