抄録
はじめに
Aさんは場面により強い口調での発言や唾吐きが見られ、噛みつく、つかむ等の他害行動に至ることがある。行動障害の研究では、PBS(Positive Behavior Support:積極的行動支援。行動に問題を示す利用者のQOL向上を目指すアプローチ)の適用による他害行動の減少が報告されており、今回重症心身障害者であるAさんに適用を試み、有効な結果が得られたので報告する。
目的
PBSによるアプローチにより、Aさんの行動障害が減少する。
対象
Aさん 40歳代男性 大島分類:2 診断名:脳性麻痺 知的障害 てんかん
方法
1.期間:2013年6月〜2014年1月
2.方法:(1)データ収集(2)機能的アセスメント(3)支援計画の立案および実施
3.倫理的配慮:倫理委員会での承認後、家族に同意を得て実施した。
結果
Aさんの「強い口調での発言」の内「本人の考えと違う状況になってしまったとき」33件について、機能的アセスメントを実施した。事例の分析より『Aさんはお手伝いによって他者から賞賛されることに喜びを感じているが、一時中断してもらうつもりで声かけをしても、お手伝いそのものを否定されていると受け取ってしまうため、大声を出したり、唾を吐いたりする行動につながっている。』という仮説を立てた。「食事介助の補助」「靴下配り」「口腔ケア物品の準備」等の支援計画を立案し、称賛やお礼の言葉を伝えるようにした結果、「強い口調での発言」は33件から16件に半減した。
考察
「問題行動には本人なりの意図があり、本人を取り巻く環境の改善が問題行動の克服につながる」というPBSの概念に基づいた、「強い口調での発言」についての仮説および支援計画は妥当であった。
結論
行動障害を抱える重症心身障害者に対するPBSによるアプローチは有効であった。