抄録
はじめに
当センターでは、経鼻チューブ・胃瘻などにより医薬品を注入している利用者が多く、散薬調剤および錠剤の粉砕調剤が非常に多い。また、摂食嚥下障害のある経口摂取者においても同様に調剤を行っている。そのため、薬剤師業務の大部分を定時薬の調剤と配薬セットが占めており、本来、薬剤師が行うべき病棟業務ができていない。このような背景から業務の効率化を目的に簡易懸濁法の導入を薬剤師主導にて計画した。
散薬調剤は一般的なルールに従いRp毎に計量を行っており、その件数は非常に多く、増え続けている。簡易懸濁法の導入は、粉砕調剤の中止や散薬の錠剤化が行え、さらに用法毎に合包が可能になるため、業務の大幅な改善が予想される。そこで今回、どの程度効率化がみられたかを検証した。
対象と方法
当センターに長期入所中の経鼻チューブ・胃瘻にて注入している利用者を対象とし、簡易懸濁法導入の前後で定時薬業務における所要時間およびセット包数を比較した。
結果
対象者は41名(46%)であった。導入前と比べ、7日分定時処方の調剤時間は134.3分の削減となった。逆に、監査時間は錠剤の一包化が増加したことで8.5分の増加となった。また、セットに関して、包数が1人あたり平均17.6包/日から12.6包/日と3割減少し、それに伴いセット時間も削減された。
考察
簡易懸濁法を導入することで、業務時間の短縮・効率化が得られた。その結果、現在短期入所者の持参薬確認やセット、医療情報システムの整備に費やすことが可能になった。今後、さらに利用者の薬物療法に関わる予定である。また、看護業務においても、服用包数の減少は投薬時確認の軽減となり、医療安全に貢献している。重症心身障害児(者)施設の多くで薬剤師の人員配置が限られている中、今回の効率化により本業である医療安全や医薬品の適正使用のための病棟業務に重点を置くことができると思われる。今後も更なる病棟業務拡大に繋げていきたい。
申告すべきCOIはない。