日本重症心身障害学会誌
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市民公開講座:シンポジウム「地域共生社会における医療的ケアのある重症心身障害児者支援」
有床在宅療養支援診療所における医療型短期入所
大藤 佳子
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2024 年 49 巻 1 号 p. 77-81

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抄録
Ⅰ.たんぽぽクリニックでの取り組み 在宅医療に特化したクリニックであるたんぽぽクリニックは、2000年10月四国で初めての在宅療養支援診療所として開院し、現在23年目である。約100人の多職種からなる職員がおり、年間約600人の在宅患者の訪問診療を行っている。2016年16床の病床をもつ「たんぽぽのおうち」を開設し、有床在宅療養支援診療所となり、外来診療も開始した。 「たんぽぽのおうち」は、お看取りが近づいたがん末期の患者がおられ、障害のあるご家族だけでは支えきれないため、緩和ケア病棟のある他の病院への入院を勧めたところ、「入院して新しい人間関係を作るのは大変なんや!」とご家族に入院を断られたのがきっかけで誕生した。入院しても、在宅で診ている主治医や看護師が引き続き診療するため、患者やご家族も安心して療養でき、最期まで支えることができるようになった。 表1は、たんぽぽクリニックの患者概要(2023年現在)である。総在宅患者は約600人、1か月当たりの新規患者は30~40人、月平均の看取り患者は15人で、そのうち2人がたんぽぽのおうちでのお看取りである。人工呼吸器患者は27人、20歳未満の小児患者は16人である。 私は、2018年10月たんぽぽクリニックの勤務医となり、子どもから大人までの在宅医療を学んだ。2018年10月から2019年9月までの1年間で訪問した50歳未満の小児および医療的ケア児者は36人であった(表2)。そのうち、19歳までの患者が17人、20歳以上の患者が19人で、悪性腫瘍の2人と脳性麻痺の1人が、この1年間で亡くなった。主な疾患は、低酸素性脳症や脳形成障害、てんかん性脳症、脳性麻痺などの中枢神経疾患が多く、脊髄性筋萎縮症や筋ジストロフィーなどの神経筋疾患や、染色体異常や先天奇形の方もおり、20歳以上では、やはり中枢神経疾患と神経筋疾患が主であるが、悪性腫瘍が3人、頸髄損傷や頭部外傷後の方が3人と中途障害の方が増えていた。患者の年齢(図1)では、初診時は年齢が低くても、長い患者で16年間訪問診療をしており、現在15歳以上の患者が多い。医療的ケアの内容(図2)で多いのが、気管切開20人、胃瘻・腸瘻18人、人工呼吸器14人で、医療的ケアがないのは、19歳までの脳性麻痺と、脊髄小脳変性症の2人である。これら患者のレスパイト先(図3)を示す。19歳までは、子ども療育センターなどのレスパイト先を持ち、定期的に利用している患者が多いが、それに比べると20歳以上では、レスパイト先がない患者が多かった。 たんぽぽのおうちには5つの機能(表3)がある。①トランジット機能、②看取り機能、③食支援機能、④レスパイト機能、⑤医療型短期入所であるが、当初は①から④の機能が目的で開設された。トランジット機能での入院は、病院からの在宅患者の紹介数の増加につながった。自宅看取りが難しい家族も多く、看取り機能やレスパイト機能も必要であった。また、食支援にも力を入れており、嚥下機能評価や言語聴覚士による摂食指導を行っている。 4つの機能に加えて、私が入職する前から、重症心身障害児者(以下、重症児者)の短期入所も開設して欲しいと話し合いを重ね、2019年5月(令和の始まり)から、空床を利用して医療型短期入所を開始した。重症児者や医療的ケア児者のニーズに応えるとともに、災害時対応や経営面にも寄与している。 短期入所の利用者は、訪問診療を行っている患者を基本として、日帰り利用から開始した。自宅が遠いため訪問診療はできないが、中途障害のためレスパイト先がない人工呼吸器の成人患者も利用されている。知的障害のない医療的ケア者やけいれん重積がある患者、介護する家族が精神疾患を持っている患者の利用もある。人工呼吸器を常時必要とする患者が、豪雨により避難が必要になった時に緊急で短期入所を利用したこともあり、災害時対応も重要な機能と考えられる。日帰り短期入所から開始して、在宅患者の利用は徐々に増え、宿泊利用も入れて、現在の延べ利用日数は月平均で60日、利用登録患者は20人である。日中の生活介護事業がない日曜日や週末の日帰り利用も多くなっている。 医療型短期入所は、患者側だけでなく、成人在宅医や看護師、リハビリスタッフなどの診療所職員が、小児や若年の患者に慣れていくためにも有用である。短期入所の開始時には、病棟スタッフが、医療的ケア児者やてんかん患者の対応に不安があったが、小児経験のある看護師を配置し、人工呼吸器の研修を行うなどして、少しずつスタッフも慣れていった。また、訪問診療と訪問看護、短期入所という横のつながりを生かして、日常生活の中でのケアの見直しを行うことができ、ゆっくり家族と話をする場にもなるため、患者の生活の質を高めることや、家族との絆をより深めることにもつながっている。 短期入所では、愛媛大学教育学部の協力のもと、文部科学省の「障害者の多様な学習活動を総合的に支援するための実践研究事業」の一環で、学校を卒業後の重症児者を対象とした訪問カレッジを行うとともに、スタッフによる音楽会も開催している。 また、短期入所は災害時の避難先としても利用できるため、人工呼吸器の患者家族とともに、個別避難計画を作成する会議(図4)に参加した。病院主治医、訪問診療医、短期入所担当の看護師、社会福祉士、相談支援専門員が集まり、行政からは危機管理課、健康増進課、福祉課が参加し、民生委員など地域をどのように巻き込むか、電源の確保を行政側はどうするのか、時間帯によっては誰が一番に安否確認ができるのか、などの問題点を確認した。合計3回の会議を行い、愛媛県医師会と愛媛県小児科医会の小児在宅医療検討委員会が作成した「災害時対応ノート」が完成した。この会議を開催したことがきっかけで、その後、行政による避難訓練や非常用電源の確保にもつながった。 Ⅱ.ゆりかごファミリークリニックでの取り組み 2022年4月愛媛県新居浜市において、「地域で暮らしたい、おうちで過ごしたい、そんな思いを叶えるために」という理念のもと、小児科外来診療と訪問診療を行うゆりかごファミリークリニックを開院した。2023年1月に新築移転し、有床在宅療養支援診療所となり、病棟(9床)では医療型短期入所と産後ケアを行うとともに、リハビリテーションと訪問看護も開始した。 医療型短期入所では、たんぽぽクリニックと同様に、訪問診療を行っている在宅患者をお預かりし、発達を促す療育やリハビリに力を入れている。胃瘻患者にはペースト食を提供して栄養管理も行っている。近くに保育園があり、行事があるときには一緒に参加させていただくこともある。 人工呼吸器を使用している場合(図5)は、訪問診療の時には確認できない睡眠中の呼吸状態のチェックを行うこともできる。長時間お預かりするなかで、日常生活でのケアの見直しや発達の促進にもつながるような関わりも行っている。また、患者家族の交流会(図6)も開催している。今後、地域と連携した災害時対応や個別避難計画の作成なども行う予定である。当院は太陽光発電を設置したが、福祉避難所には指定されておらず、今後の災害時対応については、行政との話し合いを重ね、患者家族の安心につながる生活や地域づくりに関わっていきたいと考えている。 Ⅲ.小児慢性特定疾病児童等自立支援事業について 小児慢性特定疾病児童(18歳未満で厚生労働大臣が定める慢性疾病をもつ子ども)には、気管切開などの医療的ケアを必要とする子どももおり、医療費助成対象となっている。そのうち、人工呼吸器が必要な子どもの場合は、重症認定により自己負担はない。2015年の児童福祉法改正により、医療費助成は義務的経費となり、それまでピアカウンセリング事業として相談事業が行われていたものが、小児慢性特定疾病児童等自立支援事業1)(以下、小慢自立支援事業、図7)となった。愛媛県では、愛媛大学地域小児・周産期学講座の檜垣高史教授が理事長を務める、認定NPO法人ラ・ファミリエが愛媛県と中核市である松山市から委託を受け、小慢自立支援事業を行っている。また、愛媛大学の厚生労働省科学研究として、この小慢自立支援に関わる研究を続けており、詳細は、「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業情報ポータル」(https://www.m.ehime-u.ac.jp/shouman/)というホームページに、これまでの取り組みや成果物、成果報告会の資料が掲載されている。 この小慢自立支援事業では、必須事業として、自立支援員による相談支援事業が行われているが、難病支援センターなどに委託して行っている場合、保健師が兼務して自立支援員としての相談を行っている場合などがあり、自治体によって運営形態は様々である。自立支援員が主となって相談を進め、地域の他機関との調整やカンファレンスを行う場合もあるが、医療的ケア児等コーディネーターと一緒に支援を行う場合もある。 (以降はPDFを参照ください)
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