2021 年 20 巻 p. 29-39
本研究では看護実践能力別に中堅看護師を2群に分け, 視覚情報からつながる臨床判断時の思考がどのように異なるのか, その特徴を明らかにすることとした. 患者観察を行う課題下で中堅看護師の視覚情報として注視を測定後, 臨床判断の思考を調査するために録画した注視データをみせ「何をみて, 何を考えていたか」発話してもらった. これらの注視データと発話データを看護実践能力の高い中堅看護師6名と一般中堅看護師27名に分け比較した. その結果, 2群間での各注視項目への注視回数や注視時間に有意差はなかった. 一方, 発話単位数について, 一般中堅看護師群では観察項目内の【顔面部】で7.0回, 臨床判断に関する思考の《推論型》で2.0回, 《分析的ケア決定型》で1.0回であったのに対し, 看護実践能力の高い中堅看護師群ではそれぞれ9.5回, 6.5回, 3.0回と多かった. これらより看護実践能力の高い中堅看護師は限られた視覚情報のなかでも効率的により多くの思考を行い, 気づきからつながる推論や分析的判断を活用していることが明らかとなった.