日本看護技術学会誌
Online ISSN : 2423-8511
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20 巻
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原著
  • 大竹 智江, 西村 礼子, 横山 美樹
    2021 年20 巻 p. 57-67
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 手指衛生の継続的な教育の導入に向け, 「正しいタイミング手指衛生プログラム」の実施による, 学生の手指衛生のタイミングの認識, 手指衛生行動, 手指衛生のタイミングの認識と手指衛生行動とのずれの有無への影響を明らかにすることである.
     看護専門学校3年生26名を対象に, 介入前後に質問紙調査と手指衛生の遵守率の調査を実施した. 介入前後のタイミングの認識, 手指衛生行動は, Wilcoxonの符号順位検定にて比較し, 介入と, タイミングの認識と手指衛生行動とのずれの有無との関連は, Fisherの正確確率検定にて分析した.
     その結果, タイミングの認識は, すべての項目で向上し, 有意差があった. 手指衛生行動は, 2. 清潔/無菌操作の前, 3. 体液曝露リスクの後では有意差がなかったが, 1. 患者に触れる前, 4. 患者に触れた後, 5. 患者環境に触れた後, 全遵守率で有意差があった. 介入と, タイミングの認識と手指衛生行動とのずれの有無に有意な関連はなかった. これらの結果より, 本プログラムは, 看護学生の手指衛生のタイミングの認識と手指衛生行動の向上に影響を与えることが示された.

  • 菱沼 典子, 加藤木 真史, 野月 千春, 酒井 礼子, 丸山 朱美, 平澤 ちよみ, 久賀 久美子, 秋山 雅代, 加藤 京里, 縄 秀志 ...
    2021 年20 巻 p. 68-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 筆者らが開発した「排便パターン分類フローチャート (加藤木ら, 2020)」の, 臨床における有用性を検証することである. 本フローチャートは便の形状, 回数, 排便日数を指標として, 2週間の排便状況から排便パターンを分類するものである. 自由意思で参加した急性症状がない通院・入院中の患者52名からの, 63件の排便記録を分析対象とした. 収集した排便記録について, フローチャートを用いて排便パターンを分類し, また自由意思で参加した看護師50人にも排便状況をアセスメントしてもらった. 両者の結果が異なった27件のうち22件 (81.5%) が, フローチャートの分類の方が排便状況を反映しており, 臨床における排便状況のアセスメントツールとして本フローチャートは有用と考えられた. 課題となったのは1週間がすべてゆるい便への対処と, 下剤の使用時のアセスメントで, これらへの留意を追加することで, さらに有用性が高まると考える.

  • 早瀬 良, 大久保 暢子, 佐々木 杏子, 角濱 春美, 沼田 祐子, 三上 れつ, 菱沼 典子
    2021 年20 巻 p. 79-88
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は我が国の急性期病院において根拠ある看護技術の普及に関わる組織的要因とその具体的内容を明らかにすることであった. 根拠ある看護技術が普及している施設に勤務している8施設28名の看護師を対象とし, 半構成的面接調査を実施した. 結果, 根拠ある看護技術の普及に関わる組織的要因について, 237コードの意味内容から27サブカテゴリーに分類し, 5カテゴリー (【組織風土】【看護管理者の推進行動】【部署メンバーの態度・特性】【組織内の協力】【経済的な影響】) を抽出した. 根拠ある看護技術を普及させるために特有な組織的要因として, 個々人の特性である【看護管理者の推進行動】と【部署メンバーの態度・特性】が示され, 特に看護師長のリーダーとしての特性の重要性が見い出された. また, 組織構造の内部特性として【組織風土】【組織内の協力】, 組織の外部特性として【経済的な影響】が示され, 多職種連携の土壌の重要性ならびに診療報酬が普及を促進するきっかけとなることが見い出された.

その他
  • 宮永 葵子, 石井 和美, 坂井 恵子, 松井 希代子
    2021 年20 巻 p. 89-95
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 2種類の清拭圧による健康成人の感じ方の違いを明らかにすることである. 方法は, 健康成人30名の上腕外側部にディスポーザブルタオルを用い, 弱め圧 (A圧:2.0~4.0kPa) と強め圧 (B圧:6.0~9.3kPa) の2種類の清拭圧で清拭を実施した. データは, 各清拭圧の主観的評価として質問紙を用い「温かい」「肌触りがよい」「拭き心地がよい」「爽快感がある」「フィット感がある」「汚れが落ちた感じがある」「ひんやりした感じがある」の7項目を点数化したものと清拭後の感想を収集した. 結果, 主観的評価は「汚れが落ちた感じがある」の項目に有意差が認められた. 感想の内容からは, A圧は “優しく拭かれ落ち着きを感じた”, B圧は “気持ち良かった” という独自のサブカテゴリーが抽出された. 以上のことから, 弱め圧の清拭は「落ち着き」を感じ, 強め圧は「汚れが落ちた感じ」や「気持ち良さ」を感じることが示唆された.

  • 香川 将大, 飯島 佐知子
    2021 年20 巻 p. 96-105
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    ジャーナル フリー

     医療者不足を解消するため, 医療現場への情報通信技術 (ICT) の導入が進められている. しかし, 看護師の時間効率性に対するICT導入の影響については評価が分かれている. 本研究の目的は, 看護業務の詳細な基礎データを得て, 特に業務時間短縮の観点からスマートグラスの看護業務支援方法を検討することであった. 我々は都内の中規模病院にて, 2020年10月から12月にかけてビデオカメラを用いた入院業務のタイムスタディを6事例行い, その動画分析を行った. その結果, 入院業務は13のセクション (9つのルーチン業務, 4つの非ルーチン業務) で整理され, 非ルーチン業務の割合が大きいことが確認された. また, 入院時の記録業務は診療報酬関係記録と看護記録に分けられ, 記録方法が異なっていた. これらの結果は, スマートグラスを用いたタイムマネジメント, 業務進捗状況の共有, 記録入力の支援によって, 看護師の時間効率性が高まる可能性を示した.

原著
  • 上條 翔矢, 中山 栄純, 大谷 尚也
    原稿種別: 原著
    2021 年20 巻 p. 29-39
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究では看護実践能力別に中堅看護師を2群に分け, 視覚情報からつながる臨床判断時の思考がどのように異なるのか, その特徴を明らかにすることとした. 患者観察を行う課題下で中堅看護師の視覚情報として注視を測定後, 臨床判断の思考を調査するために録画した注視データをみせ「何をみて, 何を考えていたか」発話してもらった. これらの注視データと発話データを看護実践能力の高い中堅看護師6名と一般中堅看護師27名に分け比較した. その結果, 2群間での各注視項目への注視回数や注視時間に有意差はなかった. 一方, 発話単位数について, 一般中堅看護師群では観察項目内の【顔面部】で7.0回, 臨床判断に関する思考の《推論型》で2.0回, 《分析的ケア決定型》で1.0回であったのに対し, 看護実践能力の高い中堅看護師群ではそれぞれ9.5回, 6.5回, 3.0回と多かった. これらより看護実践能力の高い中堅看護師は限られた視覚情報のなかでも効率的により多くの思考を行い, 気づきからつながる推論や分析的判断を活用していることが明らかとなった.

その他
  • 西谷 琴音, 紺谷 一生, 宍戸 穂, 杉村 直孝, 渡部 一拓, 矢野 理香
    原稿種別: その他
    2021 年20 巻 p. 40-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 清拭タオルの面替え操作の有無における汚れの除去率, 皮膚温および主観的評価を比較することである. 対象はA大学の20歳代の健康な男女17名とした. すべての対象者に面替え操作あり清拭および面替え操作なし清拭を実施し, 前腕屈側部における汚れの除去率 (実験Ⅰ), 背部の皮膚温および主観的評価 (実験Ⅱ) を比較した. 結果, 汚れの除去率は面替えあり群が, なし群よりも有意に高値を示した (P=.002). 皮膚温には清拭直前~15分後において群間差はなかった. また, 主観的評価「温かさ」, 「心地良さ」においても2群間に有意な差はみられなかった. 以上より, 清拭におけるタオルの面替え操作は, 汚れの除去率を高めることが示唆された.

  • 小林 由実
    原稿種別: その他
    2021 年20 巻 p. 47-56
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/08/20
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は, 車椅子使用患者の移乗だけではなく, 下衣の着脱と臀部の拭き上げ等も含めた排泄前後のトイレ介助において, 人力のみの介助方法とスタンディングマシーンを使用した介助方法での看護師の身体的負担を, 主観的・客観的評価を用いて明らかにすることである.
     研究対象者は看護師8名と患者役の健常高齢者1名とした. 看護師に2つの方法で介助を行ってもらい, 上腕二頭筋・傍脊柱筋の筋活動と, 腰部屈曲角度を測定した. 介助後, 質問紙調査を実施した.
     結果, スタンディングマシーンを使用したトイレ介助方法は, 人力のみのトイレ介助方法と比較し, 所要時間は長くかかるが, 左右上腕二頭筋と左傍脊柱筋の筋活動と腰部屈曲が減少していた. 質問紙でも肯定的に受け止められており, 負担が軽減できることが示唆された.
     負担をより軽減するためには, スタンディングマシーンを使用したトイレ介助方法に熟達するとともに, スタンディングマシーンを導入したうえでボディメカニクスを活かした姿勢・動作を行う必要がある.

原著
  • 宮脇 健介, 松村 千鶴, 深井 喜代子
    2021 年20 巻 p. 1-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は, 化繊タオルの含有化学成分の有無が全身清拭の保温・保湿性に及ぼす影響を比較することである. 男子学生16名を対象に, 異なる日に同じ方法で, 成分含有タオルと成分除去タオルを用いて全身清拭を行った. 評価指標は深部温, 皮膚温, 心拍変動, 皮膚の水分量・油分量・pH, 血圧, POMS-J短縮版, VAS (覚醒度とリラックス度), 素材の肌触りのリッカートスケールを用いた. その結果, 両者ともに清拭前後において覚醒度の低下とリラックス度の増大, POMS-J短縮版の3項目の評点の低下, 最終的な深部温と前胸部の皮膚温の上昇に, それぞれ有意差がみられた. 成分含有タオルでは, 終了直前に右前腕の皮膚温の一時的な低下がみられたが, その時点の群間に有意差はなく, 保温性については両者ともほぼ同等であった. 成分含有タオルは成分除去タオルにくらべ, 終了直後の水分量の有意な上昇がみられたため, 一時的な保湿効果が認められた.
その他
  • 中野 元, 堀 悦郎
    2021 年20 巻 p. 11-19
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー
     手浴による自律神経活動のバランス調節効果を検証するために, 実験的に交感神経活動が亢進している状態および副交感神経活動が亢進している状態を誘発し, それぞれの状態に対する手浴の効果を検討した. 健康ボランティア23名を対象にした試験では, 暗算負荷による交感神経賦活状態において, 手浴では対照にくらべて交感神経の賦活を有意に抑制していた. 一方, 安静閉眼による副交感神経賦活状態においては, 対照にくらべて手浴では交感神経活動の有意な上昇を認めた. 以上から, 手浴は交感神経優位な状態では交感神経活動の上昇を抑制し, 副交感神経優位な状態では交感神経活動を亢進させ, 自律神経のバランスを調節する効果を有することが示された.
  • 田中 美智子, 江上 千代美, 松山 美幸, 津田 智子, 野末 明希, 長坂 猛
    2021 年20 巻 p. 20-28
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/20
    ジャーナル フリー
     日常生活下での高齢者における睡眠状態と入眠前後の自律神経反応を明らかにするとともに, これら睡眠に対する主観的評価との関係について検討することを目的とした. 対象は地域で自立して生活している65歳以上の8名 (男性3名, 女性5名) で, 自宅での睡眠をセンサーマット型睡眠計で測定し, 睡眠中には心拍計を装着した. 心拍計でRR間隔を計測し, 心拍変動により自律神経系の反応を分析した. 入眠後にRR間隔の延長, 自律神経系の活性の指標であるSDNNや交感神経系の指標としてのL/Tの低下が認められ, 高齢者は睡眠により交感神経系が抑制されることが示された. 睡眠に対する主観的評価との関連では, 睡眠時間, 在床時間が長いと睡眠の評価も上昇した. 自律神経と主観的評価の関係では, 入眠前と入眠後で関連が認められた. これらの結果より, 入眠前と入眠後の早い段階の自律神経反応が睡眠評価に影響していると考えられ, 高齢者の睡眠援助に入眠前から副交感神経系を高め, 交感神経系を抑制する自律神経系を調整するケアが必要であるといえる.
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