2020 年 25 巻 2 号 p. 282-286
症例は68歳,男性.歩行障害で整形外科に入院し,腰部脊柱管狭窄症の診断で椎弓切除術を施行された.術後も歩行障害が改善しないため頭部精査を行い,正常圧水頭症の診断でシャント手術方針となった.しかし術前に発熱があり,急性胆囊炎に対して胆囊摘出術を施行された.胆囊炎の軽快後に正常圧水頭症に対して脳室腹腔シャント術(以下V‒Pシャント術)を施行した.その際,術後の腸管癒着を考慮して腹腔鏡を併用した.術後の経過は良好で合併症なく症状は軽快した.腹膜炎や腹腔内手術の既往がある患者では,シャント術を施行する際に腸管癒着による腹側管の位置異常や,腹側管を留置する空間の吸収障害を考慮する必要がある.癒着が考えられる側でのV‒Pシャント術の腹側管留置時には腹腔鏡を併用した手技が有用であった.