日本栄養・食糧学会誌
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総説
機能性脂質によるメタボリックシンドロームの予防・改善に関する研究
(平成21年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
永尾 晃治
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2010 年 63 巻 1 号 p. 3-7

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抄録

本研究は, メタボリックシンドロームに対する食環境の影響について検討を行う中で, 特に機能性脂質の活用に注目した。その中で, 鎖中に共役二重結合をもつことを特徴とする共役脂肪酸が, 病態モデルラットの肥満・高脂血症・肥満誘発性高血圧の発症を抑制することが見い出された。その作用機序として, 肝臓や骨格筋において糖・脂質代謝関連遺伝子の発現調節を介して代謝異常を改善すること, 脂肪組織においては分泌性アディポサイトカインの産生調節を介して全身の糖・脂質代謝や血圧調節に影響を及ぼすことが示された。その他にも共役脂肪酸異性体, n-3脂肪酸, 植物ステロール異性体, リン脂質異性体などが, 糖・脂質代謝調節機能を発揮することでメタボリックシンドロームの予防・改善に寄与しうることを明らかにした。以上の成果は, メタボリックシンドロームの予防・改善における機能性脂質活用の有効性を示し, 特にアディポサイトカイン産生制御を介した病態改善作用は, 栄養薬理学研究における新たな標的組織として脂肪組織の重要性を強く示唆するものであった。今後, 詳細な作用機序の解明や新規の機能性脂質発見など, さらなる研究の進展が期待される。

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© 2010 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
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