本研究では食品因子の腸管上皮透過機構および腸管上皮細胞機能に対する生理作用を主に細胞レベルで解析した。食品因子はトランスポーターや細胞間隙経路など様々な経路を介して腸管上皮細胞層を透過すること, 一方で腸管上皮トランスポーター活性は他の食品因子によって制御されることが見出された。また腸管上皮モデルCaco-2細胞と活性化マクロファージモデルTHP-1細胞との複合培養系を用いて, 抗腸炎症作用を有する食品因子を探索および解析することに成功した。並行して, ある種のポリフェノールなどが炎症悪化に関与するインターロイキン8の腸管上皮からの分泌を抑制することで, 腸炎症を予防・改善することも示された。さらに生体異物の侵入を防御する解毒排出酵素の発現が, ある種のフィトケミカルによって受容体型転写因子の活性化を介し制御されることが明らかとなった。これらの知見は腸管上皮と食品因子の相互作用を分子・細胞レベルで解析したものであり, 今後さらなる研究の進展が期待される。