日本栄養・食糧学会誌
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乳脂肪球膜の摂取によるHos:HR-1(HR-1)マウスとヒトにおけるTEWL改善効果ならびにマウスでの遺伝子発現解析
後藤 英嗣辻 敏宏明石 啓子元島 英雅
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2012 年 65 巻 3 号 p. 105-111

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抄録

バター製造で発生するバターミルクには,乳脂肪球膜(Milk Fat Globule Membrane,MFGM)が豊富に含まれており,MFGM は膜タンパク質とリン脂質を主成分とする複合物質から構成されている。我々は MFGM の食品機能性を見出す研究の一環で,アトピー様症状を発症させる条件で飼育した HR-1 マウスに MFGMを混餌で与えたところ,背部皮膚の経皮水分蒸散量(Transepidermal Water Loss,TEWL)の上昇抑制効果を見出した。この作用機序を明らかにするために皮膚の遺伝子発現解析を行った結果,皮膚バリア機能が異常な HR-1 マウスでは表皮の周辺帯構成遺伝子群が著しく増加しており,MFGMはその発現量を有意に減少させることを見出した。また,冬季の北海道で実施した肌荒れを実感している人を対象としたMFGMの摂取試験においても,TEWL の改善効果が見出された。以上の結果から,MFGMは周辺帯構成遺伝子群の過剰発現を正常化して皮膚のバリア機能を回復させる肌質改善効果を有していることが示唆された。

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