抄録
寝たきり・不動状態による筋萎縮 (廃用性筋萎縮) は多くの寝たきり患者を生み出し, 深刻な社会問題となっている。しかしながら, リハビリテーション以外に有効な対処法は確立されていない。一般的に, 廃用性筋萎縮は, タンパク質合成の減少とタンパク質分解の亢進によって特徴づけられる。我々は宇宙フライトやベッドレストに暴露した骨格筋のマイクロアレイの結果から, 廃用性筋萎縮の重要な原因酵素がユビキチンリガーゼ (ユビキチン依存性タンパク質分解経路の律速酵素) であることを発見した。したがって, ユビキチンリガーゼの活性を抑制することが筋萎縮予防の鍵となりうる。本総説では萎縮筋で見られるタンパク質分解機構と筋萎縮予防のための栄養学的なアプローチに関する知見を紹介したい。筋萎縮に関与する経路の分子機構の理解は, 新しい治療法のアプローチの開発のために重要であると考える。